聞こえる ページ9
刻宗 side
『ここは、死に際に来るところなのか...?』
思い出の欠片で埋まっていく、この空間。
''パキパキ'' 突如、俺のいる空間にヒビが入り始めた。
___それはなぜか、俺の体にも入っていた。
『なんだよ...こりゃ...』
俺の体が足から崩れ落ちていく。
''俺たちを殺したお前は、ここで死ななければならない''
俺が今まで滅殺してきた、数えられないほどの鬼と、なんの罪もない人々が、俺にそう言ってきた。
『まだ、死にたくない...約束を果たさなければッ...!!!』
きょーちゃんとの、さつまいも料理を振る舞う約束。
天くんとの、お嫁さん達がいる屋敷にお邪魔させていただく約束。
悲鳴嶼さんとの、手合わせの約束。
むいくんとの、屋敷にお邪魔させていただいて、一緒にふろふき大根を食べる約束。
伊黒くんとの、みっちゃんと上手くいくように手伝う約束。
義勇との、誤解されないようにするために対策を一緒に練る約束。
さねとの、おはぎを一緒に食べる約束。
みっちゃんとの、伊黒くんと上手くいくように手伝う約束。
___しのぶとの、大切な人を死なせない約束。
この他にも、沢山の約束をした。
死ぬ訳には行かないじゃないか。こんなに約束してしまったのに。
_______早く、起きてくださいね。待っていますから。
その声を聞いた瞬間、体の崩壊が止まった。
この空間が、真っ白な空間が、薄紫に染まり始めて、蝶が俺を囲んだ。
こんな透き通った声と言ったら、もう、______しかいないじゃんかよ。
この薄紫色の空間と美しい蝶。______にぴったりだ。
俺の、想い人。
胡蝶しのぶ
やっぱり、俺にはしのぶしか居ないや。
しのぶは、偉大だなぁ。
こんな時まで、俺を救ってくれる。
さぁ、目覚める時が来た。
起きて一番最初に見たいのは、あの美しいしのぶの寝顔か横顔かな。
すみません、俺の掌から零れ落ちた数々の命。
鬼にされた元人間だった方々、今度は平和な世界で、幸せに生きてください。
俺が目を閉じた瞬間、数々の蝶が俺を包んだ。
しのぶのいい匂いがする。
心地いい。
さようなら、最高の空間。
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作者名:点P | 作成日時:2022年2月3日 21時