最後の初恋 3 (ページ46)

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ストローをグルグルとかき混ぜる。カフェラテのミルク部分とコーヒー部分が徐々に混ざっていくのを見ていると、正面から声がかかった。

「元気にしてた？」

私とは違って手元のコーヒーに手をつけていないロロ先生は、3年前と変わっていないように見える。家を出て楽しく過ごしていることや、大学は自分の行きたいところに行ったことを告げると、先生は、そっかと静かに呟いた。

「いつこっちに戻ってきたの？」
「数日前。一時的にね」
「ふうん、じゃあまた韓国から出てっちゃうんだ」
「うん」
「…さっきの、先生の子ども？」

私の視線は、無意識のうちに、左手の薬指にはめられた指輪に移った。その指は白いカップを数回優しく撫でると動きを止める。

「ううん。ジェミニヒョンの子ども」

「世話頼まれてて。さっきの人はヒョンの奥さん」思わず心の中で大きな安堵のため息をついた。あの女の子と先生の会話があまりにも親子だったから、もしかしたらフィアンセの人との子なのかもって焦っていたんだけど。

そっか、という私の声は変に震えていた。途端に先生は頬を緩ませる。

「…なんで笑うの」
「安心したように見えたから」
「…安心したって言ったら？」
「ん？」
「ホッとしたって言ったら、先生はどう思うの？」

あの校舎で過ごしていた時よりも強気な態度で接することができているのは、きっとこの数年でお母さんに縛られなくなったから。顔色を伺うことなく自分の気持ちを表現できるようになった。きっとこれが、本当の私だ。

ここで初めて先生はカップに口をつけた。

「悪い気はしないよ」

私を落ち着かせるような微笑みに、むしろ私の気持ちは波立った。

こういうことがある度に、私とロロ先生の間に引かれた線を身に染みて感じる。這いずりながら貪欲に手を伸ばす私はいつまで経っても子供で、伸ばされた手を爽やかな顔をしてすり抜ける先生はいつだって大人だ。

不釣り合い。

その線を見つける度に、そう言われているような気がする。

「ねぇ、先生」

でも私は決めたの。今日だけは先生を私のものだけにしたいって。