最後の初恋 3 (ページ28)

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幸せになってほしいのにページ28

ティーカップを見ながら話すチソンさんは、当時を思い出しているのだろう。「すぐに発つことが決まったみたいだから、韓国に帰って来れるのかは曖昧だったんだと思います。適当なことをAさんに言って変に期待させるような失礼なことができなかったんですよ」

「…でも」
「分かります。事情があったにしろ、場所すらも言わないなんてチョンロも酷いですよね」
「いえ、あの、」

首を横に振る。唯一、チソンさんが口にしていないこと。だけど私が知っていることがあった。

「フィアンセっていうのは」口にした瞬間、彼の細い目が見開かれた。まるで、知っていたんだ、と言いたげな表情。

「…チョンロからですか？」ドンヒョク先生から聞いたことを伝えると軽く項垂れた。あのヒョン本当に…と呟いている声が聞こえる。やっぱり、チソンさんからしてもドンヒョク先生は口が軽い人みたいだ。

そんな先生が教えてくれなかったのだから、やっぱりロロ先生の帰国諸々については口止めされているのだろう。あの小麦色の先生は、大事な約束はちゃんと守ってくれる人だから。

「フィアンセは、お見合いをすることなく決まったみたいです。チョンロのお母さんが選んだみたいで。ファッションの大手企業の社長令嬢らしいですよ」

その後に続いた名前は本当によく聞く有名なだった。韓国だけじゃなくて海外にも店が何百店舗もあって、よくCMや広告も流れてる。そこの社長令嬢が、あの最悪な香水をつけている人なのか。
年齢はチョンロの二つ上だと言っていました。そう言うチソンさんの声が少し遠くに聞こえる。

ロロ先生が、ヌナとか、恋人同士でしか使わない愛称で呼んでいると思うと正直吐き気がした。ダメじゃん自分。諦めに来たんでしょ。