最後の初恋 3 (ページ23)

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「プライベートを大事にする人だから、家の場所も教えたがらないんです。そんなチョンロが、職場の生徒を連れてくるのは明らかに彼らしくない」

「だからこそさっき、Aさんの姿を門の外で見た時『あ、この人はチョンロが大事にしてた人なんだろうな』って」その言葉に心が揺らぐ。

誰にでもああいうことをするわけじゃないの？私だからしてくれたの？なんて、今更浮かんだところで答えが返ってくることのない疑問。

「…でも、ロロ先生は私に何も言わないで韓国を出ました。私は、先生が帰ってくるのか、そもそもどこに行ってしまったのかすら知りません」
「それは、Aさんのことが大切だからなんじゃないかな」

ぼやけ始めた瞳を隠すように俯く。ハーブティーの水面に反射したバラ。この部屋に入ってきた時に一番最初に目についた黄緑色。前来た時もここにあった。あの時とは違うバラかもしれないけど、見た目は同じだ。

チソンさんの発言の意味が理解できない。大切だから言えないってどういうこと？普通、大切だったら正直に真実を伝えるものなんじゃないのかな。私がまだ幼いから分からないだけなのだろうか。

「…大切に思ってくれているなら、教えてほしかった」

心の底からの本心が、水分を含んで震えた声となりこぼれ出る。
少しの沈黙が私たちの間を通り過ぎた。「Aさん」チソンさんの落ち着いた声が私を呼ぶ。顔を上げると、覚悟を決めたような、凛々しい顔つきをしていた。

「チョンロの過去について話します」
「…え？」

突然？色々話が飛んでいるような気がするけど、それは私だけなのか。反して落ち着いた様子でカップに口をつけた彼は、喉を一回動かすと、再びこちらを見た。

「Aさんがチョンロのことを想っているなら、あなたにはチョンロのことについて知る権利があると思います」
「あの…でも、勝手に聞いてしまうのはなんか…」
「大丈夫です。俺の判断なので」

「もし何かあったら責任はとります」芝を跳ねさせていた時とは全く違う凛とした姿。思わずテーブルの下の手に力が入る。

そうだよ、なに怖気付いてるの。私はあの人のことを知りにここに来たんだ。この屋敷の門を通った時に、もう覚悟は決めたでしょ？

少し怖いけれど。もう戻れないかもしれないけれど。

テーブルの下で手をギュッと握りしめ、彼に言った。

「お願いします、教えて下さい」