最後の初恋 3 (ページ21)

今日:36 hit、昨日:31 hit、合計:28,418 hit

. ページ21

「ハーブティーでございます。冷めないうちにどうぞ」

燕尾服を着たお爺さんが微笑む。

この人、ここにいるんだ。てっきりロロ先生の付き人なんだと思ってた。海外に行ってないってことは、この人はロロ先生じゃなくて、この建物自体に仕える人なのかな。

向かい側に座る男の人の前にも同じものが置かれた。「ありがとうございます」お爺さんに柔らかい笑みを浮かべたその人は、私の隣の席を見て、あっと声を上げた。

「それ、コラボのやつだ。買ってくれたんですね」
「コラボ…？」

隣の席には先ほどトートバッグを置いたはず。

”Dlor x Clyde”

布に印刷されているその文字を見て、一気に記憶が繋がった。

「え…？あ、そういうこと」驚きのあまり、思わず口に出てしまった。

脳内に浮かぶのは、修学旅行で向かった日本でソアと訪れたあの店舗にデカデカと表示されていた写真。店舗の外だけでなく中にも液晶画面で大きく表示されていて、なおかつその人の手にはソアのお目当ての香水が握られていたから余計印象に残っていたのだ。

あの時の写真の姿は髪に水分が含まれている感じでアンニュイな雰囲気を纏っていたのに対し、今の髪の毛はサラサラしていて、全体的に爽やかな雰囲気だ。すぐに気がつけなかったのはその違いがあったからなのかな。

「…そういうこと？」

私の独り言にそう言って首を傾げる彼。ハッとして、すぐに「これは友達から貰いました」と一つ前の質問に答える。その顔が少し綻んだ気がした。

「そうなんですね」
「でも、私も店舗には一緒に行ったので写真見ました。あの、チソンさんが香水持ってるやつ」
「あぁ、あれか。うん、色んなところで使ってもらえてるみたいです」

「まだ俺も全店舗まわれてないから、話で聞いただけなんだけど」恥ずかしそうに微笑む姿は、写真のクールな印象とは大きくかけ離れている。これが、Clyde専属モデルのパクチソン…。なんか、モデルをしている時の印象と全然違う。

てか、この人って最近色んなところから引っ張りだこで、有名になってきているモデルさんなんでしょ？そんな人が「チョンロ」と呼んでいたことから2人の仲はかなり近いものだと予想できる。え、ロロ先生って何者？

「あの、チョンロ先生とはどんな関係で…」
「あ、そうですよね。そこから話さないと」

「まず、もう知ってもらえてたみたいだけど一応自己紹介から。パクチソンです、Clydeっていうところで仕事してます」話す彼の頭がペコリと下がる。