最後の初恋 3 (ページ16)

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静かな声が駐車場に広がる。

あ。そう思った途端、瞳にじわりと水分が浮かんだ。

「お前に会いに来たんだよ。ちゃんと話してやれよ」腕を引っ張って私を隣に立たせたドンヒョク先生は、見覚えのある黒い車から出てきたチョンロ先生にそう言い放った。そして、離した手で私の背中を数回優しく叩く。その軽い衝撃で数歩前に踏み出した私は、その瞳にロロ先生を入れる。

フィアンセって誰なの。韓国を出るってどこにいくの。もう帰ってこないの。

聞きたいことはたくさんあるのに。なのに、なかなか言葉にならない。涙だけが私の目からこぼれ落ちる。

「ろ、ロロ、先生…っ」

必死にブレザーの裾で涙を拭うも次々に頬を伝う水分は、なかなか終わることを見せなくて、情けない声しか出ない。

「…泣かないで」

私の腕を優しく掴んだ先生は、しゃがんで下から見つめてきた。その顔はいつもの冷静な顔に見えるけれど、瞳は揺らいでいる。

違うの。困らせたいわけじゃないの。胸のポケットから取り出されたハンカチが私の頬に落としたのは、あの懐かしい香り。月が泳ぐシルクのベットの上で香っていた、あの香水の香り。
胸がキュッと締め付けられた。もうこの香りを嗅ぐことはできないし、スーツ姿だって、いつも片手に持ってるタブレットだって、見ることはできない。

綺麗な指が紡ぐピアノの音だって、聴くことはできない。

「…先生っ」
「うん」
「先生、あのね、私」
「…うん」

先生がここからいなくなってしまわないように、肩を震わせて必死に言葉を続ける。そんな私を見つめる先生の眉が少し下がる。

「先生が好きなの」