最後の初恋 3 (ページ12)

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「…ドイツに来てほしいって」

「楽団の方から声がかかって、もう親が了承したって」続けて出てくる事実を、黙ったまま脳に処理させる。彼の声色からして彼自身は賛成じゃないみたい。

俺はチョンロの高校時代の苦労を知っている。自分がやりたいことと親の意見の間で悩んで、最終的に下した結論も。チョンロが定時退勤なのだって、極力仕事に熱を割かないようにしているのだって、そこにある理由が『仕事が嫌いだから』ってことじゃないことも俺は理解している。

…それなのに、彼の親はまだ満足し足りないようだ。

「ドイツで何をやるの？楽団ってことは、そこに所属するってこと？」
「…そうらしいよ。高校の時にお世話になってた先生がいたとこ。その人の推薦もあって声をかけてきたらしい」
「フィアンセは？結婚の話出して、相手を1人にできないから行けないって言えばなんとかなりそうだけど」
「ダメだった。『フィアンセの人も一緒に行けばいいじゃない』だってさ」
「…クソだな」
「本当」

「親に振り回されてばっかりだね」頭を壁に寄りかからせて天井を見る。終わったと思ったんだけどな、と呟くチョンロの手にあるコーラのキャップは閉まったまま。

「…どうすんの？」
「行きたくないけど、行くしかないかな」
「学校辞めるってことだよね」
「うん」
「…そっか」

もう俺じゃどうにもできないし。そう言うチョンロは、笑っていたけど、ちゃんと笑えていなかった。

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