恋愛対象外でも好きでいていいですか？ (ページ1)

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「A～」

「酒臭い。近付かないで！」

あんまりお酒が得意じゃないくせに
今日は気分がいいからと頼んだジョッキをテーブルに置いて、ベクは私の腕に絡みついてくる。

私たちがカップルに見えるって…？
そんなことある訳ないじゃん。
天と地がひっくり返ったとしても有り得ない話だ。

「ひっでぇな～。もっと優しくなれよ。ヌナみたいに！そうじゃなきゃ今年もクリぼっちだぞ」

また始まった。
ベクのそういう所が嫌だ。
だって胸がズキズキ痛むんだもん。

そのヌナとは、最近彼が片思いする相手。
綺麗でスタイルが良くて到底私は叶わない素敵な人なのだろう。

何の話をしていても彼女の名前が出てくるんだ。
彼の無意識から来るその行動に
私の心は少しずつえぐられていく。

「あんたがクリスマスに1人にならないように空けておいてあげてるの」

これは半分本気で半分冗談。

「残念でした～。俺はもう予定できたし」

「あっそ。おめでと」

気にしてないかのような一言を吐き捨ててから
ジョッキを奪ってゴクリゴクリと空にしていく。

…本当はめちゃくちゃ気にしてるんだけど。

「ダメ元で連絡したらいいって昨日言われたんだ。嬉しすぎて泣くかと思ったよ…プレゼント何がいいと思う？花束とかどう？…重いかな？」

ニヤニヤしながら止まらないベクの惚気話。
大体は聞き流してるけど彼はお構い無しに話を続ける。

いいな。こんなに愛されてて。
…私だって、なんて意気込んでいたのは一昨年までのこと。でもだんだん現実が見えてきたの。

私は貴方にとって"恋愛対象外"なんだってね。

毎回毎回、好きになった人の話を聞かされる度、
＝(イコール)これは"恋愛対象外宣告"なんだと思い知らされた。