○ ページ41
柳を見送り、私は遺物みたいに悠馬のゆめマスクを持って、ぼんやりと食堂に向かっていた。珍しくお腹が空いたのだ。
雛次君から『学園に帰ってきたら竜ヶ崎さんに呼ばれたから、ちょっと待ってて』とメッセージが来たので、とりあえず一人で食事を取ろうとしていた。
…ら、
「あっ！？A！なんで安静にしてないの！？」
元気よくこちらに駆けてくる凛太郎と出会ってしまった。
しかも後ろに一年生三人を引き連れている。
私の前でキキーッと立ち止まり、プンプン！とわざとらしく頬を膨らませて腕を組んでいる。嵐みたいなやつだな。
「お腹空いたんです…」
そう言うと、凛太郎ははわっと口元を抑えた。
「流石にかわい〜じゃんそれは……お腹すいちゃったかぁ〜…うーん、理由がきゃわたんだからお咎めナシ！」
うんうん、と大きく頷き1人で全部解決した凛太郎を、新兎君、獅子丸君、針宮は不思議そうに見つめていた。
「あ、そそそA、今から三すくみ会議に特待生全員集合フェスなんだけどさぁ、体怠いだろうから無視しちゃっていーよ！時雨には俺から言っとくねん」
え、と声をあげる間も与えられず、「んじゃあ俺、主役だから、いってきまーす！」とピシッと敬礼のポーズを取り、戸惑うような顔の一年生三人を引き連れて去っていってしまった。
…本当に嵐みたいなやつだ。
あと、雛次君が仁さんに呼ばれた理由はこれか。
…凛太郎は気を遣ってくれたのに、「皆が参加する大切な会議に、来なくて良いよ」という残された事実が、なんか私だけ力不足で要らないって言われてるみたいで、…
食堂の前で考えを振り切るみたいにぶんぶん首を振り、悠馬のゆめマスクをぎゅっと両手で抱きしめた。
ごめんなさい、悠馬。私は無力で、やっぱり、私では貴方に何もしてあげられません。
とか、祈るみたいにしながら、食堂に入った。
今は普通に授業中なので一般生徒は居ないはず。なのに人影が見え、よく目を凝らすと桐谷先生だった。
近寄っていくと、先生は焼き鳥をいくつか皿に取り、ドリンクを吟味しているみたいだ。
ふと、私の気配に気づき、顔を上げて一瞬考えてからハッとして、「おお、A」と呟いた。
とりあえず会釈。
「今、全員参加の会議してんじゃねえのか」
「…体調が悪くて、りん…久磨先輩が、休んでろと」
先生は聞いておいて興味なさそうに、へぇ、と言ってプレートに目線を戻した。
と思ったら、勢いよく再び私の方を振り向いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 179人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クウ(プロフ) - 初めまして。続き楽しみです。 (2020年7月25日 17時) (
レス) id: e1d577414c (このIDを非表示/違反報告)
ハト(プロフ) - るーさん» 返信が遅れてすみません。ありがとうございます！短編集の件ですが、なかなか更新できていなくて、もう何話か書いてから公開しようと思っております。それまでお待ちいただけると嬉しいです！！ (2019年9月3日 7時) (レス) id: 28b0102360 (このIDを非表示/違反報告)
るー - 夢主ちゃんがすごくタイプで好きな感じです。ストーリーも面白いです！これからも応援してます！もしよければ短編集の方のパスワードを教えてもらってもいいですか？ (2019年7月30日 23時) (レス) id: e7803b918a (このIDを非表示/違反報告)
ハト(プロフ) - レス返せてなくてすみません！どの激励のお言葉も嬉しく読ませていただいています！！二期始まる前に完結させれるように頑張ります……！！ (2019年7月26日 16時) (レス) id: 28b0102360 (このIDを非表示/違反報告)
hermes753(プロフ) - 初めまして!めっちゃくちゃ面白くて一気読みしちゃいました。更新待ってます!!! (2019年6月18日 0時) (レス) id: 8867b9a324 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハト | 作成日時：2018年11月29日 11時
