送り出す勇気 ページ40
雛次君は私のために買い出しに行ってしまったし、なんだか寂しくてぎゅーっと目を瞑った。
そしてそのまま、ぐっと伸びをすると、手に何か当たった。
……悠馬の、ゆめマスクである。
そういえば置いていったままだな。
…。
昨日は凛太朗と雛次君のおかげで勝手に気分が晴れた気になっていたが、そう言えば問題は何も解決していない。
柳の様子からするに、きっと悠馬に要らんことを言ったのだろう。悠馬は幽ほど心が強くないから、信頼していた人間……柳に、嘘をつかれたと知ったら『柳君だから許そう！』と開き直ることなんてできない。
別に逃げることは悪いことじゃない。現代の日本では逃げる事なんて結構許されている。
逃げた先に悠馬にとっての何かを見つければ、人生に価値が見出せれば、それでいい。
昔のような「世間全体で正しいと思われる事」の定義だって、今では揺らし放題だ。
だから、悠馬が好きなようにすればいい。彼が苦しくないように生きれる方法があるなら、それを選べばいい。
………………でも、悠馬が居なくなったら、私は寂しいと思う
悠馬のゆめマスクを胸元に引き寄せた。
彼のゆめ、ちゃんと観れたこと無い。
初めてちゃんと感じれたのは、ここを出て行く前のひどいユニゾンのものだけだ。
「…私を置いてくんですか」
ゆめマスクに不満をぶつけてみた。
……返事があるわけない。
…。
ゆめマスクを枕元に戻し、まくらをキツく抱きしめた。
安心するところに帰ればいいって言ったのは私だ。
今更帰ってきてだなんてあまりにも浅はかだろう。
自己嫌悪に陥りそうになり涙がじわ、と玉になって枕に滲んだ。
……すると、部屋がノックされた。
だるい身体を起こしてドアまで向かい、ゆっくりと開けるとそこには柳がいた。
「……やなぎ」
心なしか頬が赤く腫れている気がする。
しかしいつもの表情は崩さず、ヘラ、と微笑んだ。
「……A。ちょっとこっち側のほっぺ思いっきりはたいてくれない？」
「……」
彼の手にはスーツケースが握られている。
…………悠馬のとこに、行くって？
「……口閉じないと舌を噛みますからね」
「んん」
パン！
柳の左頬に思い切り平手打ちを食らわせた。
柳はうん、と頷いて、開き直ったかのような顔をした。
「ありがとう、A。出来る限り、僕がすべきことはしてくるから」
そう言って柳は出口の方へと歩いていった。
…
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クウ(プロフ) - 初めまして。続き楽しみです。 (2020年7月25日 17時) (
レス) id: e1d577414c (このIDを非表示/違反報告)
ハト(プロフ) - るーさん» 返信が遅れてすみません。ありがとうございます！短編集の件ですが、なかなか更新できていなくて、もう何話か書いてから公開しようと思っております。それまでお待ちいただけると嬉しいです！！ (2019年9月3日 7時) (レス) id: 28b0102360 (このIDを非表示/違反報告)
るー - 夢主ちゃんがすごくタイプで好きな感じです。ストーリーも面白いです！これからも応援してます！もしよければ短編集の方のパスワードを教えてもらってもいいですか？ (2019年7月30日 23時) (レス) id: e7803b918a (このIDを非表示/違反報告)
ハト(プロフ) - レス返せてなくてすみません！どの激励のお言葉も嬉しく読ませていただいています！！二期始まる前に完結させれるように頑張ります……！！ (2019年7月26日 16時) (レス) id: 28b0102360 (このIDを非表示/違反報告)
hermes753(プロフ) - 初めまして!めっちゃくちゃ面白くて一気読みしちゃいました。更新待ってます!!! (2019年6月18日 0時) (レス) id: 8867b9a324 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハト | 作成日時：2018年11月29日 11時
