木漏れ日 ページ15
木陰が気持ちいいベンチのところまで戻ると、ビアンキ君は居なくなっていた。
……待ってて、と言ったのに
湊は呑気にベンチに座り始め、あったか〜い、などとほざいてる。
「……居ない…」
「え〜？あ、Aもここすわろ。ふたりでお昼ねしよ〜」
「はぁ？」
思わず心からの「はぁ？」が出た。
微笑みながら自分の隣をぺちぺちたたく眠り姫ならぬ眠り王子を見て、大きく溜息をついた。
彼はどこに行ったんだろう。
まだその辺にいるのか、はたまた入れ違いで時雨が発見したのか。
時雨の弟なんだから、どこかで怪我でもしたら東雲学園生全員ビアンキファミリーに消されたりしないだろうか。
唸っていると、湊が急かすように声を張った。
「A、お昼ねしようよ」
こいつは当初の目的を完全に忘れているんだろうか。数分前の話なのに。あんなにウニウニ言っていたのに。
「湊…今は」
ビアンキ君を探して…と言いかけて、口をつぐんだ。
湊がむすっとして眉を寄せている。
「……いっしょに寝てくれなきゃやだ〜」
「…」
いや…でも、由仁君がなにをしでかすか分からないのにほっておいて時雨にバレでもしたら、
「ねえ……A〜」
「……」
ぽかぽか陽気が程よく差すベンチに、ふわふわ湊の誘惑が私の常識度をいじめている。やめて。やめなさい。
「A……」
「……っはあ…………わかりました」
▼私は考えるのをやめた。
もうヤケだ。
そもそもここにいてって私言ったもん。時雨には悪いが諦めよう。
えへへ、と笑う湊の隣に腰かけると、肩に引き寄せられた。
悔しいことにこいつは脚が長いため座高はそんなに高くない。丁度良い位置にある肩に頭を乗せると、水風船を割ったみたいに急に眠気がはじけた。
「A、あったかいね」
「…うん…そうですね」
湊の香水の匂いに包まれて、まぶたとの戦いが開始された。垂れてくるまぶたを押し上げようと筋肉が善戦している。頑張れ！！
「…A、ねむたいの？」
「いえ…そんな」
いま頑張ってるんです。筋肉。名称とかは知らないけど。
すると湊が、私がもたれている方の手で私の頭をやんわりと撫で始めた。
「よ〜しよし、Aはおねむだね〜」
「みなと……」
やめてください、と言いたいが口がモニャモニャするだけでうまく発音できない。
完全に湊に肩を貸す予定だったのになんだこれ。
善戦していたはずの意識も段々と遠のき、私はゆっくりと眠りについた。ちくしょう。
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クウ(プロフ) - 初めまして。続き楽しみです。 (2020年7月25日 17時) (
レス) id: e1d577414c (このIDを非表示/違反報告)
ハト(プロフ) - るーさん» 返信が遅れてすみません。ありがとうございます！短編集の件ですが、なかなか更新できていなくて、もう何話か書いてから公開しようと思っております。それまでお待ちいただけると嬉しいです！！ (2019年9月3日 7時) (レス) id: 28b0102360 (このIDを非表示/違反報告)
るー - 夢主ちゃんがすごくタイプで好きな感じです。ストーリーも面白いです！これからも応援してます！もしよければ短編集の方のパスワードを教えてもらってもいいですか？ (2019年7月30日 23時) (レス) id: e7803b918a (このIDを非表示/違反報告)
ハト(プロフ) - レス返せてなくてすみません！どの激励のお言葉も嬉しく読ませていただいています！！二期始まる前に完結させれるように頑張ります……！！ (2019年7月26日 16時) (レス) id: 28b0102360 (このIDを非表示/違反報告)
hermes753(プロフ) - 初めまして!めっちゃくちゃ面白くて一気読みしちゃいました。更新待ってます!!! (2019年6月18日 0時) (レス) id: 8867b9a324 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハト | 作成日時：2018年11月29日 11時
