向日葵みたいな君8

314.きっともうすぐ ページ28

いつの間にか手から離れたスマホ

どこに行ったのかな






発信履歴消さなきゃ

こんな夜中に何度も掛けてゴメン






きっと明日は
最悪の目覚めになっちゃうね






声が聞きたかっただけなの






「どしたん？」って言って欲しかった


「星が綺麗だよ」って答えたら


少し間があって
「ほんまやな」って言ってくれる


必ず同じ景色を見て答えてくれる


寂しくて電話したって
いつも気付いてくれる


私の他愛もない話に
優しく相槌打って欲しかっただけ






そんな『当たり前』が恋しくなっただけ






恐怖と不安と寂しさで
とっくに壊れたはずの心が疼いた今






ずっと変わらず私を見ていてくれた

あなたの声が聞きたくなっただけ






私の道標

淳太くん






出来る事なら

もう一度会いたい






『桜、一緒に見に行くからな、絶対
　ネズミの国も』

『約束やからな』






ネズミの国

楽しかったなぁ






最後の約束

全部は守れそうもないや

ゴメンね






でも桜はきっと大丈夫だよ

淳太くんが思ってるのとは
違うと思うけど






ありがとうとゴメンねを
伝えておいて良かった






幸せになってって

誰よりも幸せになってねって

本当に思ってるんだよ






もう少しだけ

ううん

きっともうすぐだから






もう少しだけでいいから

私のワガママに付き合ってね






他に何も出来ないから

他に何も返せないから

せめて

もう一度伝えられたら






シンデレラ城プラン…間に合うといいな






遠のく意識の中

こじ開けられた目に
弾けるほどの眩しさが行き来した





そのまま薄く開いた目には
眩しさの名残がチカチカしている





いつの間にか室内には
看護師さんや先生がバタバタと動いている



顔と体をアレコレ触られる感覚と

切羽詰まった空気感だけわかる



先生が呼んでるけど
もう声が出ないよ






視線を窓に向けると

メガネを掛けてないのに

何故か一面の星が見えた






淳太くん見て

今夜は本当に星が綺麗だよ






口をこじ開けられた感覚と同時に
すべての音が徐々に遠のいていく






ブレーカーが落ちたかのように
視界が闇に包まれて
音が完全に聞こえなくなった

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