【∞】腐の塊【鯨人】 (ページ30)

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黒side

時計を見るのはもう何度目のことだろうか。気が付けば針はもうどちらもてっぺんを越えていて、そういえばこの時計は少し速かったかな、と思い出す。正確な時間を知りたくて、掌にある携帯のロックを解除する。…0時15分、か。時間を確認した俺はついでに電話を掛けることにした。発信履歴の一番上にある人物の名前をタップしてすぐにﾌﾟﾙﾙﾙという機械音が聴こえる。この機械音を聴くのも、何度目のことだろう。確か、今日、正確に言えば昨日の21時くらいから掛けているような気もする。それなのに一向に出ない相手に苛々して、爪を噛む。どこで、なにをして、誰といるかは分かっている。分かっているからこそ腹が立つ。ﾌﾟﾙﾙﾙという音が止み、あ、と声を出すと今は出られないという感情の籠ってなさそうな女の人のアナウンスが聴こえた。つい舌打ちをしてしまう。携帯を机の上に置いて、気を紛らわそうと、ゲームの電源をつける。するとそこに俺の携帯が鳴った。ぱっと手に取るとそこにはさっきまでずっと電話を掛けていた相手。指で画面をスライドし耳に当てる。そしてはい、と声を出す。

「あ、もしもし？」

そこには俺の予想してた声とは違っていた。

「…まる？」
「そうそう。ごめんなぁ、夜遅くに。あのさ、裕ちんさぁ、今から家行ってええ？」

これまた急に、どうしたというのだ。この気持ちを汲み取ったかのように「すばるくんが酔ってもて、よこの家行くーって」と報告を受けた。思わず安堵の溜め息が出る。よかった。ちゃんと帰ってくる。そう、俺がさっきまで電話を掛けていた相手はすばるだったのだ。

「おん、ええよ。迎えにいこか？」
「んー？いや、もう着くから大丈夫」

その言葉通り、すぐに家のチャイムが鳴った。
慌てて玄関に向かうと微かにすばるの声が聞こえた。なにを話しているかは聞き取れなかったが、とりあえずすばるはそこにいる。あぁ、本当によかった。

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