【∞】腐の塊【鯨人】 (ページ24)

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吉房←西ページ24

西side

今、俺は絶体絶命のピンチというものを本当に味わったかもしれない。目の前で怯える房野さんと、楽屋のドアを閉めてこちらを笑顔で見る吉村さん。なんて良い笑顔なんだろう。いや、違う。そうじゃなくて、

「なにしてんの、西島くん？」

あぁ、俺は今日が命日になるかもしれない。

事の始まりは1時間前だった。
俺は出番が終わり実くんと楽屋に戻った。着替えたりしゃべったりしながら帰り支度をして、実くんはじゃあねと言って先に楽屋から出た。そこで一息ついてるとガチャっと楽屋の扉が開いて房野さんが入ってきた。

「お疲れ」

「あっ、お疲れさまです」

急にどうしたのだろうと思い、なにかあったかなと記憶を巡らす。…いや、最近房野さんと会ってないしな。うーん、分からないものをずっと考えていても仕方ない。こうゆう時は直接聞くのが一番だ。

「どうかしました？」

「ん？別に」

「…仕事は」

「さっきまであったよ。でももう上がり。にしじも？」

「はい」

そっか、と言ってにへらと笑う。胸がトクンと跳ねた。……ん？胸がトクン？

「よ、吉村さんは？」

「さっきまで一緒にいたよ」

今度は胸がチクンとした。

「ねぇ、にしじ」

「っ、！？」

急に頬に手を添えられてソファに押し倒される。またドキドキと鼓動が早まる。

「俺ね、よっさんと付き合ってるんだ」

「…知ってます」

あ、そう？と言って房野さんが笑う。知ってる。知ってるよ房野さん。あんたらが分かりやすすぎるから。そしてまたチクン。この感覚も、さっきの感覚も身に覚えがある。でも、その感情を認めたらだめだ。だって、これは、

「嫉妬」

まさに今の俺の感情だった。房野さんを見上げると少し笑ってる。

「嫉妬してほしいんだ。よっさんに」

「…どうして」

「だって、あの人いつ浮気するのかわからないんだもん」

「そんなの今に始まったことじゃないでしょう」

「うん。でもね、俺だってね、よっさんを妬かせてみたいわけよ」

だからちょっとだけでいいの。少しえっちなこと、しよ？

首を傾げて俺を見上げるこの人は、おれがあなたに恋心を抱いていることを知っていてこんなことするんだろうか。そっちがその気ならば、と上等だとだけ言って口付ける。頬や額、鼻の先、口許にﾁｭｯ、ﾁｭｯと小鳥のような口付けを落とす。するとこんなんじゃ足りないと言うように俺の唇を噛んだ。

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