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「ダイスキ」というふざけた語尾にハートがついた言い方じゃない。
「好きだ」と一段階下がった言葉なのに、真剣に言われるとその言葉の方が何倍も痛い。
顔が好きだと認めてしまったせいで、好きな理由が邪魔をしたせいで、心臓を刺激した。
この空気に耐え切れずに「ケホッ」と大げさに喉を鳴らせば、「ズルいなホント」と呟いて二宮はあっけらかんとした顔をして笑った。
二宮は空気を読むのが上手い。表情の変化についていけない。
抉る様に傷口が広がったのに、一瞬でその傷口がなくなる。
「…二宮のせいだから」
「俺のせいにすんなよ」
「二宮のせいなの」
捻くれている二宮のせいで私も捻くれてしまった。
口に挟んだ煙草。白い煙が立ち上る。
「俺風呂入って来るわ」
ぽん、と私の頭に手を置いたあと、煙草を手に取りローテーブルに置いていた灰皿に押し潰した。
スタスタと二宮がネクタイをシュルっと取りながらバスルームに消えて行く。
その後ろ姿を見送って、ぽすんとセミダブルだというベッドに身を投げ出した。
「…バカ」
不意に口から零れ落ちた言葉は、二宮に向かってなのか、自分に対してなのか分からない。
風呂にも入っていないのに布団の中に潜り込み、目を閉じた。
相変わらず無臭の二宮。また匂いを探していた。
私の匂いが染み付いていないか、思わず探していた。
探していても匂いは見つからなかったのに、不意に甘みを一瞬感じたときだった。
「一緒に寝よっか」
二宮の声に、甘さを感じた。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年4月10日 19時
