_________ ページ44
.
裕「沸いたら先に入ってな」
「うん、ありがとう」
来るのは2回目なのに、少し緊張気味にソファーに座るAの隣に、同じように緊張気味に座る裕太。
念のためつけたテレビの音だけが、リビングに響き渡る。
結局沈黙を破ったのは、裕太でもAでもなくて、お湯張りが完了したアナウンスだった。
裕「入ってきたら?タオル置いてるし」
「う、うん...」
緊張したまま浴室に向かって、洗面台の鏡を見て頬をパチパチと叩いて気を取り直した。
お酒を飲んでいたので、のぼせない程度に入浴を済ませ、持参した下着とパジャマを身につけてリビングに戻った。
「お先でした」
裕「おかえりー...え」
「え?」
目が合ったと思ったら、そのまま固まってしまった裕太。
「え?どうしたの?」
裕「可愛い...」
聞こえないくらい小さな声でそう呟くと、頭の上にハテナマークを浮かべているA。
裕「え、めっちゃ可愛い」
今度ははっきり聞こえるようにそう言うと、ソファーに座ったばかりのAをギュッと抱きしめた。
「裕太くん?」
裕「あかん...ほんまあかん」
「どうしたの?」
裕「すっぴんとパジャマが可愛すぎる...」
そう言って一瞬力が強まったと思えば、お風呂に入ってくる、と慌ててリビングを出て行った。
「ふふっ...(笑)」
その姿を見て、Aは思わず笑ってしまったが、裕太に届くことはなかった。
裕「ほんまあかん...」
脱衣所でAの顔を思い浮かべては、服と一緒に脱ぎ捨てようと試みる。
浴室に入って、頭から思い切りお湯を被ってみても、さっきのAの無防備な風呂上がりの姿が頭から離れてくれない。
心を落ち着かせなければ、と思いながら体を洗い終え湯船に浸かり、もう一度顔をお湯ですすぐ。
「裕太くん」
やっと落ち着いてきたと思ったのに、脱衣所からAが呼びかける。
裕「ん?ど、どうしたん?」
「あの...ドライヤー借りてもいい?」
裕「そんなん勝手に使っていいで」
「ん、ありがとう。向こうに持って行くね」
裕「どうぞ」
脱衣所のドアが閉まる音が聞こえ、ふーっとため息をつく。
裕「心臓持つかな...」
そんなバカみたいなことを呟く裕太は、至って真剣のようだ。
何とか自分を奮い立たせて、浴室を後にした。
裕「...ただいま」
「おかえりなさい」
髪の毛を拭きながら戻ると、ちょうど髪を乾かし終えた様子のAがいた。
.
224人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
べてぃ。(プロフ) - 龍さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです(^^)私自身いつも裕太くんに母性をくすぐられてるので(笑)これからもよろしくお願いします。 (2019年9月22日 16時) (レス) id: adc0117cbb (このIDを非表示/違反報告)
龍 - べてぃ。さんの書く裕太くんがめっちゃ可愛すぎます!!癒されましたぁ!これからもがんばってください! (2019年9月22日 14時) (レス) id: 39b806bb30 (このIDを非表示/違反報告)
べてぃ。(プロフ) - hasamiさん» 私がどれだけ裕太くんに母性をくすぐられてるかが出ちゃってますね(笑)そう言っていただけて嬉しいです(^^)引き続きよろしくお願いします! (2019年9月17日 23時) (レス) id: adc0117cbb (このIDを非表示/違反報告)
hasami(プロフ) - べてぃさんが描く裕太くんが、ちょっとだけ子供なところが堪りません(笑)可愛いです(笑)今回もとても面白かったです! (2019年9月17日 22時) (レス) id: 88809e26ca (このIDを非表示/違反報告)
べてぃ。(プロフ) - あさのさん» いつもありがとうございます。途中少ししつこいかな?と思ったりもしましたが、そう言って頂けて嬉しいです(^^)これからもどうぞよろしくお願いします! (2019年9月17日 1時) (レス) id: adc0117cbb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:べてぃ。 | 作成日時:2019年9月13日 23時