_________ ページ7
.
nb「…俺の顔見なくていいから、一回だけこっち向いて…お願い」
少しだけ体をずらすと、霞みきった視界のなか、翔太が胸元に手をやって、俺に何かを差し出してきたのが見えた。
nb「これ…受け取ってほしい」
俺が動かないから、翔太の手が掴んだ俺の肩から伝うように下りてきて、てのひらに握らせた。
sk「なに…」
nb「第二ボタン。」
sk「っ…！」
なんでよ…俺のことただの友達としか思ってないのに、どうしてこんな大事なもの渡してくるの…？
nb「佐久間に渡すって決めてたから」
sk「、勝手すぎるよ…俺、捨てるかもよ」
nb「…いいよ。それでも。…佐久間に嫌われたとしても、渡したい物も言葉も、全部伝えられたから。」
どうにもできない感情から、思ってもないとはいえひどいことぶつけたのに…翔太はそれを受けとめてくれた。
そんな簡単に嫌いになれるわけないじゃん…バカ翔太。
sk「…じゃあ、俺のお願いも一個きいて、」
nb「ん？なに…？」
優しい声に、涙腺が壊れちゃいそうになる。
sk「はじめて聞かせてくれた曲、聞かせて。…俺のためだけに歌って」
nb「わかった。」
触れあった手はそのまま。ボタンを挟んで、指が絡まる。
nb「佐久間、俺に夢をくれてありがとう。」
sk「、ありがとう、っ…、翔太、」
息ができなくなりそうなほどくるしくて、まだ涙もとまってくれないけど。その五文字にありったけの思いを込める。
端正な横顔。
綺麗な歌声。
石鹸の馨り。
桃の微炭酸。
指先の体温。
すべて忘れないように、体に刻んだ。
fin.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 664人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：微.
| 作成日時：2023年7月29日 1時
