［藪に蛇なかれ村に事なかれ］ ページ34
.
fkiw
_non real
_お付き合いしてません
(iw)
俺が生まれ育った場所は、消滅するという噂が流れるほどの小さな村で。
いつからか、生娘が成人を迎えたその日に神である白蛇様に身を捧げるようになった。
山奥に消えた女性は、一年後必ず子を抱き村に戻ってくる。そうして一人、また一人と子孫は繁栄していった。…はずだった。
昨年、該当する女性が一人もいないことに頭を抱えた大人は、あろうことか男性を捧げようと言い出して。
iw『どうしてみやちゃんなの！？』
dt『俺が成人を迎えるから。ただそれだけだよ』
近所のお兄ちゃん。幼馴染。…そんなこと、一度も思ったことない。
俺にとっては大切な初恋の人。だからこそ、絶対に行ってほしくなかったのに。
iw『みやちゃんは、それでいいの…？』
dt『心配してくれてるの？ありがとう。でも大丈夫だよ。俺は男で子供なんて産めないんだから、きっとすぐ追い払われるよ』
俺たちの村を守るため。そう言って、みやちゃんは俺に別れを告げた。
“必ず帰ってくるからね”って、約束してくれたのに。
みやちゃんは、一年経っても帰ってこなかった。
幾ら俺がおかしいと訴えても、どうしようもない大人たちは“涼太は白蛇様に気に入られたんだ”だなんて都合のいい解釈を押し付けてきて。
iw「俺ももうすぐ成人になるから、今年は俺が行く！」
それなら文句ないでしょ？俺が絶対みやちゃんを連れて帰るんだから。と、宣言してやった。
探す手間が省けたって内心喜んでることも、山奥へ消えていった若者を裏で生贄なんて呼んでることも知ってるんだから。こんな薄情な奴らとのうのうと暮らすなんて真っ平御免だ。
山奥の少し手前にある小屋に籠り、羽衣のように薄く白い浴衣を着て、目尻と唇に紅を引き、盃に左薬指の血液を数滴垂らす。
ここまでが儀式の流れ。待っていればそのうち血液の匂いを辿り白蛇様がお迎えにくるらしい。
なんだよそのうちって。そんな曖昧でいいのかよ。
心の中で文句を垂れていたら、何かを引き摺る音と共に小屋の戸が開いた。
iw「、！ひっ…」
鍛錬を怠らなかった俺より太い胴体に、紅く鋭い目。言い伝え通りの容姿。目の前の蛇こそが、白蛇様って崇められてるやつに違いない。
こわくないって自分に言い聞かせても、盃を持ったまま体は動かなくて。
iw「ゃっ…くるな…！」
『儂を呼び寄せたのはお前さんだろ』
iw「ぁ、っ！」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 663人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：微.
| 作成日時：2023年7月29日 1時
