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(kj)
ラウが襲われたあの日、たまたま電話に出たのが俺だっただけなんやろうけど、助けを求めてくれたことが嬉しかった。
見つけた時には既に怪我してたから助けられたとは言えへんけどな。
ラウと一緒に“ケーキ”と“フォーク”の特性について病院の先生から説明を受けて。なんでもっと早く駆けつけられへんかったんやろって涙が出た。
事務所の所属してるタレントの数からして、ケーキとフォークが全くいないってことはないはずやけど…
デリケートな問題やから誰がどうなんてわからんし、公表してないのが当たり前。事務所内で騒動が起きたのは聞いたことがないから、きっとうまくやってるんやろな。
しかも、守らなきゃってそれだけで頭いっぱいになってたせいで、ラウが気持ちの整理をつけるどころか、俺がそれを妨害してて。
やっぱり俺じゃ頼れへんよなって、ちょっとへこんだ。
翌日ラウがひとりでコンビニに行こうとするから肝が冷えたけど、欲しいものを聞くために電話したら、やっぱりまだみんなにはいわないでほしいって。
だったら俺は、陰ながら支えていこうって。そう決めた。
そしたら、ラウから“康二くんさえよければ送り迎えしてほしい”って言われて。そんなのさ、即答でいいよって言うに決まってるやん。
美味しかった食べ物とか、その日の仕事とかを楽しそうに話したり。たまに運転してるのをじっと見られて、かっこいいなんて無邪気な笑顔で言われたらそりゃ、手元狂いかけるわ。
kj「ラウ、」
適当に流してた曲の鼻歌が止んだと思ったら、お腹までかけてやったタオルケットを握ったまま眠ってて。
kj「かわえぇ…」
出会った頃から身長は追い抜かれとったけど、まだその寝顔はあどけないままで。
頭を撫でるとすり寄るように預けられたぬくもりに胸が騒ついた。
日に日に愛おしい気持ちが強くなっていくのも、それが溢れだしてしまいそうなのもわかってた。
けどきっと、ラウと俺の抱えてる思いは違うから。大切にできれば、それでいい。
kj「…ラウ、着いたで。起きて?」
ru「ん…こぉじくんち、?」
kj「んふ、ちゃうよ。ラウんち」
ru「へへ、気持ちよくて寝ちゃった、」
寝ぼけてた、って目をこするラウの横顔を、しばらく送れない分って心の中で言い訳をつけてひっそり眺めた。
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作者名:微. | 作成日時:2023年7月29日 1時