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そして、3年ぶりの来日として翔太が東京ドームで公演を行うことが決まった。
今回は正直当たらないんじゃないかって不安でいっぱいだったけど、奇跡的に当選して。
しかも、かなりステージに近い席だった。
これなら翔太に、見つけてもらえるかもしれない。
埼玉での公演と違って俺も変装をしていたけど、ステージ上の翔太が花道を歩き始めたらそれを外して。
ありったけの声で、翔太の名前を叫んだ。
そしたら、ちょうど間奏に入るところで翔太がこっちを向いて。
目が合った刹那、すべての音が聞こえなくなった。
曲のメロディーも、まわりの歓声も。
マイクが離れた翔太の唇は、たしかに“さくま”って、動いた気がした。
音がふっと戻ってきた頃には、翔太はメインステージに戻っていた。
最後の歌ははじめて披露するもので、自分が作った曲なんだって。
翔太が紹介してから、モニターには直筆の歌詞が映し出されていった。
___“君のほしいものを与えられていれば 未来は変わっていたのかな”
___“大切なものは手からすり抜けていくけれど”
___“それでも僕は 君を忘れない”
___“あの場所でもう一度 愛を唄おう”
まるで、まだ俺のこと憶えてるって、翔太がおしえてくれているみたいで。
どうしても俺の気持ちと重なる部分があって、俺はまた涙を止めることができなくなっていた。横の柵に縋りついていないと、立っていられなかった。
そんな状態だったから、気づけば規制退場の人に声をかけられるまで平常心でいられなくて。
会場を出たら、俺の目指す場所はひとつしかなかった。
もうあの頃と違って連絡はとれないし、お互い置かれている状況も違うから、翔太が来る保証なんて何一つないのに。
それでも翔太は来てくれるって、なぜか心の奥底から信じてた。
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「大丈夫？」
sk「、ぇ…」
あの頃より少し低くて、柔らかい声。
nb「また泣いてんの？佐久間」
sk「翔太…、っ」
ステージと客席じゃ、手を伸ばしても届かない距離だったのに。
sk「翔太、？」
本当に…目の前に居るなんて、、夢みたい…
nb「行こう。」
sk「どこに…、ゎっ、」
ブランコのチェーンに添えていた手が翔太にとられて、公園の入り口に停められていたタクシーは目的地を知っているかのように発車した。
着いたのはどこかの地下駐車場で、また手を引かれるままエレベーターでぐんぐん地上から離れていく。
小さくなっていく街が、すごく輝いて見えた。
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作者名：微.
| 作成日時：2023年7月29日 1時
