［unconventional］ (ページ11)

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nb「佐久間も曲によって声変わっててすげぇじゃん。声優とか向いてそう」
sk「へへ、そぉ？」

佐久間はさっき俺のことめちゃくちゃ褒めたくせに、自分の番になったら照れくさそうにはにかんだ。

例えるなら、七色の声。どんなジャンルでも聞いた人を魅了しそうな…表現者としての素質があると思った。

それからは、ここが佐久間との大切な場所のひとつになった。

俺は佐久間が笑顔でいてくれれば、一緒に過ごせる時間があればどこでもよかったから…特になにも言わなかったんだけど。
打って変わって、佐久間はいろんなところに行きたいっていつも案を出してくれた。

夏は一緒に花火を見た。
金魚すくいで数匹獲れたのをあげたらすげー喜んで、その場で名前つけてたなぁ。
暑いからって風を送ろうと甚兵衛の胸元をはだけさせたり、かき氷シロップで変色した舌を見せてきたり…
俺をドギマギさせるようなことばっかりしてきたけど、こんな無邪気な佐久間を見られるのは俺だけなんだって、優越感に浸ったりした。

秋は金木犀がどんな匂いなのか、はじめて知った。
出会った日に感じた佐久間の甘い匂いだって一致してなかったから。
"佐久間の匂いが強くなったみたい"って言ったらなぞにしばらく照れてて。
林檎みたいって揶揄ったら怒られた。まったくこわくなかったけどね。

冬は雪だるまを製造しまくって。
もちろんふたりとも手袋なんて持ってないから、佐久間の尋常じゃないほど赤くなってしまった手を見てめちゃくちゃ焦った。
必死に息をふきかけたら"擽ったい！"って騒がれたけど。でも、拒否はされなかったから良しとした。

春は出会った公園にも桜が咲いた。
ひらりと舞う花びらが佐久間と重なって。
それが無意識に声に出てたと気がついたのは、佐久間が"なにそれ"って俺の肩を軽く叩いてきたからだった。
照れてるのか、嫌だったのか。どっちだったかは…わからなかったけど。

それが葉桜に変わる頃、俺は事務所に所属できることになった。

夢をくれた佐久間に一日でも早く成果を見せたい。ただそれだけだった。

進路を決める時期も、見学から一緒に行って。学校を決めてからは、勉強だってめちゃくちゃ頑張った。得意不得意教科が同じだったから、ニガテ分野は苦労したけどね。

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