_________ ページ2
.
nb「佐久間、」
sk「ん？っ…」
俺のそばに立ったままだった渡辺くんに後頭部を引き寄せられて。ふわっといい匂いが鼻腔を掠め、視界が学ランで真っ暗になる。
nb「俺の学校のやついたから、ちょっとだけこうしてて。泣いてるとこ見られたくないっしょ」
sk「ぁ、ぁ…ありがとう…」
口調はぶっきらぼうなのに、してくれることは全部優しくて。顔の熱が引くまで、俺もそっと背中に腕をまわした。
nb「……行ったっぽい、」
元の距離に戻ると、渡辺くんの学ランはよごれてなさそうだった。よかった…
nb「俺が友達になってやる」
sk「ぇ…？」
nb「べつに同じ学校にいなくたってよくね？俺と遊ぼーぜ」
sk「！うん…っ！」
嬉しくて抱きつきそうになったのをぐっと堪えて、精一杯笑顔をつくった。
sk「ありがとう渡辺くん！」
nb「っ…もう友達なんだし翔太でいいから。ケータイもってる？連絡先交換しよ」
それから、家族しか登録していなかった電話帳にはじめて友達として翔太の名前が追加されて。
LINEってチャットツールアプリも翔太に教えてもらってインストールした。
nb「とりあえずスタンプ送っといたから」
“友だちリスト”にたったひとり表示された翔太の文字が、俺にはすごく輝いて見えた。
sk「シナモン好きなの？」
nb「いやなんか、俺に似てるらしいこのウサギ」
sk「翔太、シナモンは犬だよ？」
nb「…」
sk「ふふっ」
まだ出会って数時間なのに、こんなに楽しいなんて。
もっと早く、出逢いたかったな。
nb「佐久間はそうやって笑ってたほうが可愛いよ」
sk「かわ、！？」
nb「っ、可愛いっつーか似合ってる！うん、それそれ。…結構時間遅いから今日はもう帰ろ」
“可愛い”なんて言われたことないから動揺しちゃって、翔太にもそれが伝染してしまったみたいだ。
sk「翔太…なにしてるの？」
nb「なに、って…おまえ足捻挫してんだろ？送ってってやるから乗れよ」
sk「っいい！自分で歩けるからだいじょ」
nb「さみぃから早くして」
さっきまで全然平気そうだったのに、耳を真っ赤にして寒いなんて言われたら…ありがたく従うしかなくて。
その先翔太は無口になっちゃったけど、本当に家の前まで送ってくれた。
家の中入れって言うから玄関の扉を閉めて。自分の部屋から外を覗いたら、翔太はもう見えなくなっちゃってた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 663人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：微.
| 作成日時：2023年7月29日 1時
