6部屋 ページ6
千歳が目覚めた時にはもう既にAは居なかった。
Aの布団は仕舞われていたし、バルコニーには自分の服が干されている。
とても台所とは言えないような台所には卵とハムの挟まれたサンドイッチが置かれていた。
その横には綺麗な字で「朝ごはんです。足りひんかったらこれで買っていいよ(お昼ご飯代にも使ってな!)」と書かれたメモと3000円が添えられていた。
味の保障はしないと言っていたがAのサンドイッチは美味であった。
添えられていた3000円には手をつけず千歳は皿を流しに置いて、携帯と財布、合鍵を片手に家を出る。
病院が開いている間に診察に行ければいいかと思いふらふらと家の近くを探索する。足の向くままに歩いて行けば大きい神社が見えた。
財布の小銭入れを確認してから鳥居をくぐる。特に理由はないが体は立ち寄りたかったらしい。神社にお参りするにはいろいろ手順があると聞いたが、千歳はさほど重要じゃないと感じそのまま賽銭を投げた。
お願いすることなんてこれと言ってなかったが、一応視力が回復するように、と目を瞑って願っておいた。
足元に擦り寄る異物感を感じ、千歳はうっすら目を開く。そこにはまだ子猫だと思わしき黒猫が千歳を見上げていた。
「おお、むぞらしか猫さんばいね〜」
猫の頭に手を伸ばしながらその場にしゃがみこむと、猫は千歳が気に入ったのか自ら頭を擦り付けた。
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作者名:あやめ | 作成日時:2019年1月6日 1時