【四天宝寺】魔法使いの飴玉 (ページ5)

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先にジャージズボンに足を通し、それから背中のボタンを外し、チャックを下ろす。ワンピース型の制服は珍しいとちやほやされたこともあるが、最初の頃は着替えに手間取った。
制服を簡単にたたみ、ロッカーに押し込んでからシャツに手を伸ばしたその時だった。
部室の扉が徐に開けられ、長身の男が姿を現す。

「うわっ！！」
「エッ」

Aは慌てて背を向けシャツに腕を通しながらドアに札をかけていたかどうかに思考を巡らせた。いや、しっかり掛けていた。悪いのはどう考えても入ってきたこの男だ。
長身の男も中に女が居たとは思ってもいなかったのだろう、ギョッとして顔を真っ赤にさせながら「ご、ごめ…見とらんけん！ほんにこつごめん」と言い逃げ、勢い良く部室の扉を閉めた。

聞きなれない方言を話していたため、彼が転校生で間違いないだろうとAは確信し、ジャージのチャックを上まであげ、長い黒髪をひとつに束ねてから部室を後にする。その際にドアに掛けていた札は中へ片付ける。
ベンチに戻っていくと、Aに気づいた白石が手を振る。

「お前めちゃめちゃ色気ない声やったな」
「それ言うためだけに呼んだんやったらシバくでほんま」
「ちゃうちゃう、ほら、このでかいのが九州からの転校生。千歳千里や」

白石の紹介にあずかった千歳はAを見ては申し訳なさそうに小さく頭を下げた。