な ページ29
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『ほんとにショックだったんだからね。だって、わたし、……その、ショッピくんのこと、』
「ちょ!ま、待て!」
『えっ』
いざ!と一歩踏み出そうとしたのに、何故か焦った様子のショッピくんに静止された。あれ?もしかしてわんちゃんあるのかと思ったのに、とちょっとだけ泣きそうになる。
「あっ、ち、ちゃうねん」
『何が違うの……?』
「さすがにここからは俺から動かな、あまりの情けなさに死にたくなるし一生チーノに馬鹿にされる未来が見える」
苦虫を噛み潰したような顔をしたショッピくんに、包み込むように手を握り直された。いつもは羨ましいくらい白いショッピくんの顔が、今はほんのり赤い。つられて顔が熱くなって、思わず俯きそうになったら、それを拒むようにぐっと握った手がショッピくんの方へ引き寄せられた。
「……すき、です」
Aのことが。伺うようにショッピくんのアメジストの瞳がわたしを覗き込む。
「Aには、俺なんかよりチーノの方がお似合いやなって思って、あんな、逃げるようなことしたけど……ほんまは、チーノじゃなくて俺が、Aの隣に立ちたい」
『……うん』
「まあ今も結局そのチーノにお膳立てされてるから格好つかんし、慣れてへんからたぶんこれからも格好つかんけど、それでもよかったら……俺と、付き合ってくれませんか」
そう言って、きゅっと唇を結んだショッピくんに、間髪入れず飛びついた。は!?と驚いた様子で、でもしっかりと受け止めてくれたその身体は、思っていたよりちゃんと男の子で。
『すき』
「……うん」
『付き合う』
「うん」
『……すきぃ』
「うん、俺も」
控えめに背中に回った腕に一瞬だけ力が込められて、それが緩んで、目と目が合って。……あ、キス、するかも。なんて、目を閉じようとしたところで。
「ショッピーーーーー!!!!部活始まってんぞー!!!!」
遠く、……ハチャメチャにでかい声のせいで距離感がバグるけどたぶん遠くから、ショッピくんを呼ぶコネシマ先輩の声が聞こえてふたりしてぴしりと固まった。
「……隠れんで」
もう一度ショッピーー!!!なんて声が聞こえたところで、ショッピくんがわたしの手を引いてベランダに出る。教室から見えないように、窓の下に身を寄せてしゃがみ込んだ。ショッピくんが、悪戯が成功したみたいに目を細めて。
「絶対声出すなよ」
今度こそ、ふたりの唇が重なった。
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馬場(プロフ) - 箱の湯さん» 箱の湯さん!こちらこそたくさんの嬉しいお言葉、感無量すぎます!本当ですか笑 ありがとうございます楽しみにしてますわたしも大好きです!!! (2月12日 19時) (レス) id: 26dcf45128 (このIDを非表示/違反報告)
箱の湯(プロフ) - 馬場さん» ゥオ!!まさか返信を頂けるとは思っておらず...!まさかすぎて感無量ですねエハイ!!!にしても馬場さんが描く新人組は健康にイイなア...。いつかライフラインの横に「馬場さんのイラスト」の項目を追加しますネ!!!!楽しみにしてて下さい!!!大好きです!!!! (2月10日 20時) (レス) id: 23839ce7d7 (このIDを非表示/違反報告)
馬場(プロフ) - shiyuさん» shiyuさん、コメントありがとうございます!どストライク……!?嬉しすぎます!こちらこそ読んでくださってありがとうございました! (2月10日 18時) (レス) id: be3a9a489c (このIDを非表示/違反報告)
馬場(プロフ) - 箱の湯さん» 箱の湯さん、コメントありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいンですケド…!最後までお読みいただきありがとうございました! (2月10日 18時) (レス) id: be3a9a489c (このIDを非表示/違反報告)
shiyu(プロフ) - 久々にこんなにどストライクな小説に出会えました。ありがとうございます。 (2月8日 21時) (レス) @page30 id: 199c730010 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:馬場 | 作成日時:2024年1月19日 21時