【完】ふりむいてパープル【d!】【shp】

青 ページ22

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shp side


最初の印象は、"なんやコイツ"、やった。週に1回、放課後にただ情報室のカウンターに座っとくだけの楽なお仕事である情報委員。1年のときからずっとやってて、ペアの相手が仲良い奴やろうとそうでなかろうとほとんど課題やったり本読んで過ごしてきた。最初の委員会の集まりでペア決めやったとき、女とか珍しいな、と思いながらさりげなく教室を見渡して見つけたそいつはつまらなそうに外見たり爪見たり毛先いじったりしてて、たぶんじゃん負けとかそういうので嫌々なったんやろうな、気とか絶対合わなそうやけどまあ喋らんしええか、なんて勝手に思ったのを覚えている。なのに、いざ木曜日、Aは利用者がいなくなった瞬間に俺の話しかけるなオーラもフル無視してアホみたいに話しかけてきた。だから、"なんやコイツ"。でも、


『てかなんで敬語？2年だよね？』
「2年やけど……まあ初対面なんで」
『えっいきなりタメ口きいてるわたしが失礼なのか。ごめんね？』


いつもはだいたい何やそれ、と笑われるか不審がられるだけの俺のあからさまな距離のとり方を、嫌な顔ひとつせずすんなり受け入れてむしろ謝ってまできたその素直さは、今思うとかなり好印象やったのかもしれへん。だからたぶん、分からん奴に言ってもあんま盛り上がらん趣味の話したりとか、自販機前でぶつぶつ独り言を言ってるところにわざわざ話しかけたりとか、普段なら絶対しないことをしたんやと思う。こいつなら何でも受け入れてくれるやろうな、って。


『お近付きのしるしにあげる』


なんて言って貰った久しぶりに飲むココアが妙に美味しかったのも、たぶんそのせい。次の委員当番の日にタメ口にしたんは、ただの気まぐれ。それやのに嬉しそうにしながら俺をショッピくんと呼んで、流れるように数学の教えを乞うAを、素直に可愛らしい人やなと思った。可愛いな、じゃなくて、こう、人間的に愛嬌があるな、って話。数学の補習に堂々と遅れてきたときも、悪びれもせず鬱先生と軽快なやりとりをするのを、愛嬌って世渡りに大事やな、と思いながら聞いていた記憶がある。そのあと俺にまた教えてと縋ってきたときも。俺に病弱そうとかサッカー部なんて意外やとか面と向かって言ってくる素直さも、まあこの愛嬌と合わされば親しみやすい要因になるんやろうな。あと、初対面のコネシマさんにひるむことなく応対できるコミュニケーション能力には普通に感心した。


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