写りにこだわる。 ページ9
いつもならあり得ないところでミスった。
そりゃ人間なんで？間違いだって起きるわけだが。
それにしてもマジであり得ない、凡ミス……
それで余計に時間かかったし！
ぜってぇあいつのせいだわ！ふざっけんな。
“ベイクが欲しい。早く買ってきて。チーかまも。”
……それだけかよ！おかしいだろ！
安堵と同時に一気に沸き起こるこの怒りの感情のやり場がない。
ったく。どれだけ心配したか……
あんな中途半端な状態で電話切られたら気になるだろうが。
やっぱりあの声はその例の男だったのか、って。
まさか今頃会って……繰り返してるんじゃねーか、とか。
ああでもないこうでもない、って。考え始めたら……
スマホだっていちいちチェックしていられないわけで。
僅かの休憩に、何か連絡来てないかって走って確認行ったら、チーかま！なんか他に無いか？普通！
しかも。じーちゃんと並んで、間に日本酒置いてすげぇムカつく変顔してる写真付。
……まぁまぁ、それはいいわ。
正直……ちゃんと家に居るんだなって分かったし。それはよしだ。
だけど！じーちゃん目閉じちゃってんだろ！ちゃんと写してやれよ！
「あー。くっそ。もー……」
何に腹立ててるのか、もはやわからなくなってきたし。とにかくイライラする。
帰宅して早々、時間お構いなしでかけた電話、
むしろ叩き起こしてやるわ！くらいの気持ちだったけど。
『へいへーい』
「……起きてんのかよ、酔っ払いが」
『お！買った？』
「買ってねーわ！今帰ってきたわ！」
『えーほんとに遅いね？あら大変』
「……チッ」
『わ！舌打ちした？ちょっとー。やめてよねーアイドルがー』
ケラケラ笑いやがって。
元気そうな第一声にホッとして脱力して、余計に腹が立つし。
もう、わけわかんねーし。
『……ねぇ。今から暇？ほら、飲みません？なんなら私がそっち行くし』
「はぁ？おまえ今何時だと思ってんだ、非常識にもほどが」
『どーうしても！飲みたい気分なんだよね！だめっすかね？ね？』
ほんとにコイツ……どうしようもない。不自然に元気過ぎて、溜息が出るわ。
そんなまわりくどい方法じゃなくていいのに……
「何かあったのか」
『……電話じゃ話したくない』
「ハァ……俺疲れてるんですけど」
『知ってる。でも、今日じゃないと嫌だし』
疲れてるのは本当。だけど、拒否ってるわけじゃない。
ただ。どこまで深刻なのか。
無事だと分かってるからこそ、はかりたかっただけだった。
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作者名：みつな | 作者ホームページ：
作成日時：2015年11月30日 23時
