ハダカノオツキアイ＃７ (ページ8)

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負けたくない。ページ8

特上特盛セット、ハンパない。

「食べないとね」

そう言う彼が、私の体を離して。さっさと私から離れて、さっさと自分の分を食べ始めたから。
私も黙々と食べ続けていたのに。

そろそろ負けそう、この量。いや、負けてたまるか！

「どういう人？」
「はい？」
「スーパーイケメン」
「っぐ！ふ……これも食べてください」
「嫌だよ。おまえが頼んだんでしょ」
「部下におまえとか言わないでいただけますかー」
「あと30分は違うから」
「は？」
「ごめんね。俺のためだから」
「……」

こういう奴だったのか。

勝手にすっきりした顔しちゃって。ニコニコ微笑んでさ。
私の新しい恋の予感に興味津々な感じ出して。

そうやって勝手に……区切りつけようとしてる？

……いいですよ。付き合ってあげますよ、だったら。

「イケメンです。以上」
「おまえは顔で好きになるの？あ、でも。それはある意味光栄なのかな」
「ちょ！自惚れないでよ！あんたとは違うわ！」
「……傷ついた」
「そ！ういうことじゃないでしょ？何……あーもうっ」

ハハハッて楽しそうに笑う。楽しそうなフリをしてる？

「イケメンなんです。顔だけじゃなくてもう、全てが」
「へぇ」
「イケメンで。とにかくモッテモテ……老若男女？の勢いで」
「へぇー。すごい人だね」
「えぇ、色々と」
「でも。そんな彼に好かれてるんだ？じゃぁ良かったね」
「そう……ですよね」
「ん？」
「……いいえ」

そうだった。そういうことになってたわ。

かと言ってこの人の前であること無いこと、っていうか無いこと無いこと並べ立てて惚気たって痛過ぎるし。

早速、話すこと無くなったけど？

「俺が言うのもなんだけど。素直に、幸せにして貰ってね」

ほんとだよ。おまえが言うなよ。

と大いに言ってやりたいが、特上特盛やっつけないといけないし。今さら言い返したってしょうがないし。

「素直にね」
「っ！しつっこいな！何それ？まるで私が素直じゃないみたいな！」
「素直に……させてあげられなかったから、言ってるの」
「……」

とっくに食べ終わった彼は、今度は少し悲しそうに笑ってるように見えた。

「あーもう何も入らない。仕事できません。ごちそう様でした」
「……よく上司の前でそんな宣言できるね」
「えぇ。帰っていいっすか」
「ふふ。だめ」

もう一度だけ、隣に並んで歩いた。

時々ぶつかる肩が、ちょっとせつなくて。

だけど清々しい気持ちもあった。ゲップは出るけど。