ハダカノオツキアイ＃７ (ページ6)

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保険をかける。ページ6

全体にいつも通りの流れながらの挨拶をしてフロアに入ると、一瞬こっちを見た彼は目を逸らした。

何よそれ。自分で言っておいてなんでそんな態度とるの？やめてよ。
こんなモヤモヤ抱えて一日仕事するとか、絶対嫌なんだけど。

各々の出退勤や居場所を示すボードに、依織ちゃんの名前が赤字なのを見て。
あぁそっか今日有給だったなって思い出して、がっかりした。

彼女のコーヒーを飲んで、ランチも弾けたり……したかったな。

“マジで何時でもいいんだったら。でもたぶんありえない時間だから。仕事だしどうしようもない。とにかく、さっさと帰ってじーちゃんと晩酌しろ。”

肯定なのか否定なのか、わからないわ。バカ正直め。

でも。仕事を始める直前にスマホが震えてくれて、泣きそうにホッとしてた。
……というか。泣きつくための保険でしょう？こんなの。サイテーだわ。
サイテー……だけど……

こうして顔合わせている限り、逃れられないじゃない。どうしたって。

「課長！今日、お昼ご一緒しません？お財布忘れちゃってー」
「A、図々しいぞー」
「うるさいなっ、康太め。なんなら康太が奢ってくれる～？よっし、どこ行く？」
「俺、パス。依織居ないからもういっぱいいっぱいよ」
「あははっ。依織ちゃんがそれ聞いたら喜ぶわ～先輩に頼られちゃって～」
「バッ！俺の威厳……！」

このメンバーで仕事出来るのも、いつまでだろう？
なんて思うとちょっと、せつなくなったりして。

えぇ！私、試験受かる気満々ですから！女の意地だわ、負けるかくっそう。

「で。なんですか」
「……怖いよ、それ。ごはん食べるんだから、腕組とかしないで？」

私のお勧めでいいですよね、ついてきてくださいね、って。
ずんずんと先を歩いてやった。隣なんてもう……歩かないんだから。

小さな個室風のお座敷、掘りごたつなテーブルを挟んで。
彼は今、困った顔をして微笑んでる。

「ごめん、ね。さっき。嫉妬した、俺」
「……は？」
「楽しそうに……わざと喋るから。Aってそんな子供っぽかったっけ。ね……いいな、なんか」
「はい？」
「ありがとね」
「何が！」
「ううん。わかんない」
「はぁ？っていうかもう、頼みません？お腹すいた！」
「ん、そうだね」

なんでさっきからクスクス笑うかな？

こっちこそ、意味わかんないわ！