絶対甘い。 ページ19
そういうことで、いいんだよね？
ねぇ。いいんだよ……ね？
忘れろって、カチョーのことよね？そうだった、そうでしたよ……
「あのぉ……お伝えしてもよろしいでしょか」
恐る恐る聞いてみたけど、返事はなくて。
でも……ぎゅって、さらに力が入った気がして。
だから私も思い切って……ぎゅって……してみたり。
私がそう喋ったからなんだろうけど、翔は何も言わないままで。
つまり私がそれ以上喋らないと……この部屋の中、すごく静かなままで。
なんかもう本当に、私のドキドキばっかり聴こえてきそうで。
このままかたまっちゃってもいいかなーとか、バカなことまで考え始める私。
どうする？浮かれ過ぎて溶けかけてるかもよ、この脳みそ。
「早く言え」
「っ！あ、えーと！……なんならもう今日ずっと……翔でいっぱい……でね」
「違うだろ。エビフライとか菓子とか意味わかんねーし」
「あっ！そう……うん、そうだったんだけど……それ既にすっかり忘れてたので！さっきの件は、心配御無用……っす。あざーす」
「はぁ？……ったくもー」
あれ？翔が普通に笑ってる……？
背中をバシンて一回叩かれて、なぜかそのまま撫でられてる。
「痛いし」
「うっせ」
考えてみたら、なかなか恥ずかしいことを口走った気がするよ？
だからって“やーい、恥ずかしい奴ー”とか言われるわけじゃないこの雰囲気が、
なんか余計に恥ずかしいというか。だから調子に乗って、文句を言ってみたけど。
翔はやっぱり小さく笑ったままで。なんなら“うっせー”も甘く聞こえる。
っていうか絶対甘いだろう！
頭まで撫でられてるわ。ぎゅうぎゅう抱えられてるわ。もう、どうすりゃいいのか！
「……人肌って……いいよねぇ」
「っぶ！だからー。おまえが言うと変な風に聞こえるわ、バーカ」
「なっ！変な風に捉えるほーが頭の中変なんですぅ！」
「変態に変態扱いされるこの屈辱たるや……終わったな、俺も」
「ちょ！前々からお伝えしたかったけども！レディを簡単に変態扱いするのはいかがなものか！」
「ふははっ。ほんっと……おまえ、バカ」
ほーら甘い。絶対甘いからね！
“変態”だろうと“バカ”だろうと、私にとっちゃ全部“好き”って聞こえるからね！
「つまりご褒美です」
「……何言ってんだ？」
「なんでもないっす。あざーす」
「ははははっ。なんだよさっきから」
翔が笑う振動が私にもいっぱい伝わって。
しばらく一緒に、体が揺れてた。
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作者名：みつな | 作者ホームページ：
作成日時：2015年11月30日 23時
