捕まる。 ページ16
それ以上。
それ以上？
それ以上……って！何それ！
「ぶはっ！おま……顔！」
「！っは？」
「マヌケ過ぎる。やめろ、やべ……腹いて……」
随分と楽しそうに笑ってますけど。
そりゃそうなるでしょうよ？どんな顔したのか知らないけど、そうなりますよ？
「おい。ダルマ女」
「っ？だる……なんですとっ？」
「自分でそう言ってただろ。おまえさぁ……めんどくせーし。うるせーし。なんか変態だし。ちょろちょろされると、うぜーの」
「……」
随分な物言いだな。おい。
翔が半笑いで言ってることは、ごもっともですけど。
そこまで今言われるとね？反論したくなってくるじゃん。
うまく言いくるめる何かを勢いよく出してやろう、そう思って口を開きかけたけど。
「おとなしく捕まっとけ、もう」
「っは、へ？っ、なにっ！」
「中途半端にちょろちょろして、ずっと世話焼かないといけないんだったら……俺が面倒見るから」
翔の手が、私の手首を掴んできた。ちょっと、痛い。
っていうか……熱い。
「おまえが言ってたあれな、幼少期の貴重なメモリーってやつ？」
「……」
「もう、ここから動くな」
だーるーまーさーんーがー……
って！この場合ダルマ女ならダルマは私であって？
捕まえるのは私であるべきで？あれ？違う？
とにかく！捕まえるとか動くなとか、おかしい……
「俺さ。将来設計があんのね、色々と」
「っ……」
うそ。この状態で喋り続ける？手首捕獲されっぱなしなんだけど！
「老後は穏やかに暮らすの。孫とかいっぱい居て。そういう幸せね」
「……はぁ」
「自分が大事にしてるもんを子供が大きくなった時に与えたいとか。色々、あんの」
どうしよう。すごい語ってるんだけど。
相槌だけうってればいいかな、勝手に喋らせとけばいいかな。
っていうかこう……
それ以上とか、面倒見るとか、動くなとか。
あんたの幸せな老後についてまで聞かされちゃったら、
本当に本当に……勘違いするんだけど！
「おまえみたいのがたぶん、一番いいんだろうなって。気づいたらそこに居るっつーか。居ても居なくても気にならない感じ？」
「いてもいなくても……て。本当に気になってないし」
「はははっ！まぁそうか。けどそれくらい、たぶんおまえ……一緒に居るのがどんどん当たり前になる気がする」
翔の手に、キュッて力が入って。
あぁ、やばい。これ勘違いじゃないかもしれない。
そう思ったらもう、視界が歪み始めた。
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作者名：みつな | 作者ホームページ：
作成日時：2015年11月30日 23時
