飲んでも飲まれない。 ページ11
ついこの間は、靴もまともに履いてなくて。
今日は、酔っ払い。マジで酒くせぇし。
そんな女を何度も部屋に入れて。何やってんだか、俺は。
「たっだいま〜」
「いつからおまえの部屋になったんだ、ったくもー。とりあえず、水。飲め」
「サンキューベリマーッチ☆」
「言っとくけど。酒は出さないからな」
「えぇ〜ケチ〜」
「じゃねぇ！俺は酔っぱらった女が部屋に居るとか、大っ嫌いなんだよ」
「へぇ〜潔癖ですな〜ふぅ〜ん」
「唇尖らすな！子供か！」
「お便所行ってくら。失礼〜」
……はぁ。俺、何しにここ連れてきたんだっけ？
あぁ、そうだ。話を聞いてやらないと……。
スキップまでしてトイレに行くAの後ろ姿に、溜息が出る。
無理、してるのは分かってるんだ。
だけどもう、あいつのそういうテンションの高低さを修正してやるのが疲れる。
どうすればいい？
Aに見つからないうちに、ビールを一気飲みして臨戦態勢に入ることにする。
この空気に……あいつの世界に飲まれてたまるか。
だけど着けたままだった腕時計を外す時、再度溜息が出た。
……疲れるわ、マジで。
もう超深夜だぞ。深いにもほどがあるし。付き合うにも限度があるだろ。
「スーパーイケメンに素直に幸せにして貰えって、言われたのね」
「は？」
「おまえが言うなよ！ってね。思いましたけど？そこはグッと堪えてエビフライ頬張ったわよ」
「……いきなり何の話をしてる？エビフライ？」
「特上特盛セット、ハンパないからね。あれは凄いわ。今度あんたも食べてみたらよろしくてよ。その頬袋に詰め込むだけ詰め込みやがれ」
あぁ、めんどくせー。またコイツの読めないパターンが始まってるのか。
トイレから戻ってくるなり始まった話を、すぐに反芻して。
そのまま暴走しないように、返していくしかない。これは。
「つまり。俺に幸せにして貰えって話ね？そいつが勘違いっつーか、前におまえが勘違いさせた件ね？」
「ん！ご名答」
「で。なんでおまえはそいつと飯食ってディープな話をしてる？」
「……話があるって言われたから。じゃぁ此処でどうぞーって、特上特盛食べに連れて行ったのさ」
「っは？なんでそんな、おま……バッカじゃねーの！」
「バッカじゃねーわ！だって！いつどう来られるかわかんないのよ？それのが怖いでしょ……」
こいつ……酔っ払ってないのか？酒くせぇけど。
俺を真っ直ぐに見るその目も声も……
さっきまでとは急に、全然違って聞こえた。
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作者名：みつな | 作者ホームページ：
作成日時：2015年11月30日 23時
