そんな場合じゃない。 ページ1
「あーいい湯だったー！ねー」
首にタオルをかけながら出てきた相葉さんが再びそう言って。
翔が、オーとだけ呟いて、マッサージチェアにさっきより深く沈んだ。
私はなんとなく……微妙に、翔から遠ざかりたくて。
カウンターのほうに、さりげなーくコソコソと動いてた。
「相葉さん、髪乾かさねーの？」
「うん？別にいっかなーって。喋ってるうちに乾くでしょ。翔ちゃんだって」
「まぁ俺はそうなんだけど。今日、時間大丈夫なのね」
「うん。翔ちゃん明日は？早いのー」
「俺、夜会だから」
「あ、そっかー。俺はロケあるんだよね、2つも」
「じゃぁ早いんじゃねーの」
「まぁ〜大丈夫でしょうっ！」
「はははっ！んだよ、そのドヤ顔」
うわーい。嵐だ嵐だ〜♪嵐がオシゴトのこと喋ってる〜♪
相葉さんが居るから、翔が一気に嵐に見える〜♪
って、喜んでる場合か！大体別に喜びたくもないわ！
『俺のこと観に来てたわけ？』
翔のさっきの言葉と視線が、ぐるぐると頭を回る。
完全に……答えるタイミング、失ったよね？これ。
本当に何？だって。どういうこと……？
ついさっきのブツブツ翔が言ってたことを簡潔にまとめるとさ。
まとめちゃうと……すごいことになる気がするんだけど。
放っておけない、大事、幸せになって欲しい、
で？相葉さんのどうのこうのが？嫌だった……イヤって、どういうこと？
からの……コンサート。俺を見てたのか？って。
“幸せになって欲しい”ですってよ。“大事”ですってよ？
だめか？簡潔にまとめちゃダメなやつなのか？
勝手に勘違いし続けるパターンなのか？
しーあわせってなんだろー♪
って。違うわ！歌ってる場合でもないわ！
……翔。何が言いたかったのさ？ねぇ……
「あれ？おぉ〜愛しの妹よ〜。いつから居たのよ」
「……別に。相葉さん、例の飲みます？お金は結構ですから」
「例の？あ、フルーツ？飲む飲むっ。翔ちゃんは？」
「俺はもう飲んだ」
「あー。俺も欲っすぃ〜ひえっひえのプリーズ」
「130円ね」
「はぁっ！次期
「主ならしっかりしなさいよ。こっちは私が出してんのよ」
「え！そうなの？じゃぁいいよ！俺出すよ」
「それはいいんです。私……あっちの人に、借りがあるんで」
やだ。やだやだ。ひとりで意識してる私……なんか、すごく嫌だ！
……翔のほう、まともに見れないよ。
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作者名：みつな | 作者ホームページ：
作成日時：2015年11月30日 23時
