Q.社畜は軍国に来ても働くのか

40枚目 不注意はお互い様だ仕方ない ページ40

いつも緑のフードかぶってるからまるで気付かなかった。腹立つほど顔がいいな。ボコボコにしたろか。

「で、お前女同士で話すんやないん」
『私がそんなことするとでも』
「いや知らん」

唐突に冷たいが知らないが正解だ。

「女どもはお前と話したそうにこっち見とるが」
『そう見えるか？』
「全く？」
『あぁよかった。そう見えたならお前の頭の中に除草剤撒くところだったよ』

私は見たくない。というか視線合わせたらバトル始まる。ポケモンバトル並の悪質さよ。

あれで何度苦労したことか。低レベポケモン連れてるときには本当にやめてほしい。

『お前も視線合わせんな、あとできるだけ私に話しかけてない風を装え』
「なんで？」
『何話してるんですかって来るだろ』

OLでは常識だ覚えとけ。

「じゃあどうするん？あいつらじりじり寄ってきとるで」
『まじかよ離れるぞ』

クソマウントや遠回しの悪口はお腹いっぱいなんです。




「わっ」
『え、っ』

周りに注意していたつもりが、横からの人間に気付かなかった。ぶつかったのは男で、男が持ってたワイングラスが傾いた。

赤の液体が灰色を染める。濁って汚い色に変わる。

『！』
「え、あっ、あっ・・す、すいません！申し訳ございません！！」

男は給仕のようで、私の顔とドレスを三度見したあとに真っ青な顔で頭を下げる。

「大丈夫か」
『ぶつかっただけ』

即座にコネシマは私と給仕の間に入る。

『私は平気。ドレスは・・うん、まぁ』
「あちゃー、落ちるかこれ」
「本当に！大変申し訳ありません！」

どっちかといえば私の不注意のせいでもある。そんなに謝らなくてもいいが。可哀想なくらい青ざめてる給仕の顔を見れば、責める気も失せる。

『顔をあげてくださいませ』
「・・っ！」
『大丈夫ですから。』
「べ、弁償いたします！お幾らですか、あの、その、何年かかるかはわかりませんが」
『それもいらないですよ。お怪我がなくてよかった』

幸いなことにグラスはコネシマがキャッチしたから割れておらず、可哀想なワインは床に散らばったが他の人間にかかってはいない。

「いえ、しかしー」
『落ち着いて。私なら大丈夫です。』

給仕の顔を上げさせる。そんなに平謝り見てると会社思い出すから辛いだけなんだよこっちも。

『本当に、大丈夫ですよ。』
「ご、ごめんなさい・・ほんとうに、本当に申し訳ない、ご、ごめんなさ、い」

まだ若いんだから失敗もあるって。仕方ない仕方ない。次やらなきゃいい話だ。

『取り敢えず落ち着いて、コネシマ、水』
「ほらよ」

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