3枚目 空から、地面に ページ3
男が動く前に、壁まで下がり頭をこするよう膝を曲げる。ずれた目隠しは頭を振って下に落とす。
思ったより緩く縛られてた。
暗順応になれてきた目が映したのは、昏倒した男と冷たい部屋。
コンクリートで四方を固めた、牢屋のような部屋。
「っ、う、てめぇ」
意識は離さなかったのか、男は私に手を伸ばす。が、脳みそを揺らされたのだ、平衡感覚まではまだ戻らないだろう。
『すまんな兄ちゃん、私は会社に行かなきゃいけねぇんだ』
牢の扉を抜け、外から鍵をかける。暗い部屋なので兄ちゃんの橙色の目はらんらんと輝いている。
『じゃ、また今度』
「あのクソあま・・っ！！」
唯一の出入り口には階段があり、登って鉄製のドアを体で押し上げると
『うっわ』
どこぞの城の廊下だよ。こんなん漫画でしか見たことない。大理石の床と天井。燭台が壁にかかっている。
日本ではまずありえない構造に頭がぐらつく。が
『帰らなきゃ』
この場所を出れば何か分かるだろう。上から出て、窓から見える景色には地面がすぐそこにある。一階か。となれば出口が
「いた！あそこか！」
『ですよね』
追手のいるほうが出口だろう。が、あそこに突っ込むほど馬鹿じゃない。こんなにでかいなら回り道くらいあるだろ。
『上行くか』
階段を2回登り、多分3階フロア。長い廊下を走るが、前に追手。振り返ると後ろにも追手。そらまぁ地形知ってる向こうのほうが有利だわな。
「大人しくしときゃあ危害は加えへんけど」
その手に持ってる長剣をしまってくれませんかね。ちらりと窓側をみると、門らしきところが。あそこから出ればいいのか。
「こっち来いや。」
『いやだ』
窓に鍵はかかってない。外開きなら飛び降りられる。また賭けか。まぁ人生博打みたいなもんだし。
『ふぅ』
窓から離れ、一息つく。私がもう何もしないと思ったのか、追手はゆっくりと私に近づいて
『んじゃ』
その手を逃れるよう一歩大きく出る。反応に遅れた追手の動きが止まるが、一人、これについてきたやつが
「まさか、てめぇ！」
関西弁の男は私の服をつかもうと手を伸ばす。
『お達者で』
それよりも早く、私は窓にぶつかる。外開きだった窓は私のタックルを受け入れ外へ向かう。私の体は空へ放り出され
地面へと転落。
頭を上に、膝を折り曲げ、来たるべき衝撃に耐えるべく目をつぶる。
が
いつまで待っても痛みはない。その代わりと言うように
「ふはははははは！」
悪の帝王のような笑い声が空から降ってきた。
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ねこ娘(プロフ) - うあ〜〜とても面白いです泣いてしまう…正論しか述べない主人公とても好感が持てます、こんな大人になりたかった……主人公を攫ったのが日常組だとわかった時のなんとも言えない笑みの溢れる感覚、素晴らしかったです(マニアック)続きも楽しく読ませていただきます！ (2021年1月18日 2時) (
レス) id: 5a39984025 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり - 会社の説明草 (2020年10月10日 18時) (レス) id: f170f9c90f (このIDを非表示/違反報告)
もちねこ。(プロフ) - まじむりですすきです (2020年8月26日 16時) (レス) id: 060862f232 (このIDを非表示/違反報告)
#よにん。＠str48＆変人系カップル(プロフ) - めっちゃ...好きです。 (2020年8月13日 3時) (レス) id: 024f1c0ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ムギ - 続き待ってます！無理しない程度に頑張ってください！ (2020年7月22日 0時) (レス) id: 93c05af962 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：碧月
| 作成日時：2020年3月26日 12時
