Q.社畜は軍国に来ても働くのか

14枚目 久しぶりと挨拶する仲ではない ページ14

『はー、疲れた』

中庭のベンチらしきところに座りタバコを吸う。なんだこれ、キャスに味似てるけど。キャスかな。

『・・ふー』

煙草も吸えないほど忙しかったのか、私。こんなふうに空を見ることもできなかった。

考えれば考えるほど異常で、だけど抜け出せなかった社畜人生。本当にクソだな。

あの会社潰れるか会社が潰れるか会社を潰すかしてくれねぇか。

『・・人に頼ってばっかだから、こうなってんのか』

この年でも反省点しかねぇのな。本当に

『クソみたいな人生送ってんなぁ』

煙草を咥えながら上を見上げる。


「何が？」


『・・・』

太陽を隠すように、私の顔を覗き込むのは


『・・あれ、確か』

「久しぶりやなぁ」


牢屋にいたやつ。


「あんたのせいで俺めっちゃ怒られたんよ。あ、隣座るわ」

『それについては謝らないし隣に座るな』

私の声が届いてないようで隣に座りこっちを見る。耳糞詰まってんのか掃除機で吸い出そうか？

「あ、俺チーノ言うんよ。よろしく」
『よく宜しくできるね』
「そら、総統命令やし」

総統・・あぁ、あの金髪な。あいつ総統なの。つか総統って今時使うの。あぁでも確かに国のトップって言ってたな。

「チャラやチャラ、ほら、握手」
『嫌だが？』

「なーんで」
『・・・』

チーノという男の手首を掴み、手のひらを上にする。

「あっちゃー」
『何がチャラだ詐欺師』

手のひらには小さな針。握ったらまぁ少し痛くなるくらい。

「ええやんこんくらい。俺脳みそ揺らされたんやで」
『私が言ってるのは』

手首を離し、そのまま握手で手を握る。チクリとした痛みが流れ出していく。

『やり返すのは構わねぇ。けど、やり返すなら堂々とやれってことだよ』

陰湿な仕返しはあまり好きではないので。

『こんなんで気ぃ晴れんの？』

私ならぶん殴られたら鈍器で殴りかかるが。

「・・いや、ふ、っ、・・・あっははははははははははは！！！」
『！』

チーノは大爆笑と言えるくらいの声を上げる。

「変わってんなぁあんた！ほんま！おもろすぎるやろ！ふ、ふふは」
『何ツボってんの』

楽しそうで何よりだが私は全く楽しくない。

「手、ごめんな。どんな反応するか楽しみで」
『お前それで謝ってると思えてんの凄いな』

尊敬するわ。

「あ、そういやゾムさんがあんたのこと探しとったけど」
『ゾム？』
「フードの緑、しらん？」


『・・・知らんな。お前私がここにいたこと誰にも言うなよ』

「それ知ってるって言ってんのと一緒っすよ」

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