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三課目 〃 ページ30

sha「わ、わかった!」

20分くらい見つめ合い、俺が根負けする。眉間にシワを寄せていた彼女はにぱっと花のように笑う。

『約束だよ!』
sha「はいはい・・」
『他の人にはいっちゃやだよ!』
sha「誰も信じねぇよ」

自分が尻餅をついていたことに気づき、腰を上げる。

『私ね、キョウカっていうの』

あなたは?と首を傾げられ、名前教える。

『しゃおろん、ね。覚えた』





人魚を、キョウカと出会ってから数日。暇さえあれば足を運ぶし、暇がなくても時間を作っては彼女のもとへと赴いた。

大先生には彼女か!と言われたので曖昧にごまかした。

いつもと同じ、あの日と同じ場所に行けば、彼女は空に向かって歌を歌っている。

『シャオロン!』
sha「おまたせ、変わらず下手くそやな」
『っさいなぁ』

一応コツみたいなものを教えている。が、こんな素人の教えでも彼女は確実に上手くなっている。やはり人魚だからやろうか。



一通りレッスンもどきを終えれば、キョウカの視線が空ではなく俺の足へと注がれてることに気づく。

sha「あん?どした?」
『・・あし、いいなぁ』

俺にしてみれば二本の足よりも一本の尾のほうがええと思うけど。そこはやはり無い物ねだり。隣の芝生は青く見える、ってことか。

sha「そ?」
『うん。だって、沢山走れるじゃん』
sha「尾だって沢山泳げるやろ」
『だけど、足があれば怯えなくて済むでしょ』

何も言い返せず、俺は目をそらす。

人魚というのは、実は裏で認知されている存在らしい。食べれば長生きできるだとか、歌声には魅力の魔法があるとか。そういう噂が独り歩きしている。

もちろんそんなことはない、とキョウカは言った。

人間が地上の住民だと同じように、人魚は海中の住民というだけだ。

sha「・・ま、足があっても怯えることはあるけどな」
『そうなの?』
sha「せやでー」

人間も大変なんだねぇと、彼女はつぶやく。

『・・ね、シャオロン』
sha「ん?」
『私さ』

キョウカは何かを話そうと、少し前かがみになる。が、諦めたように目を伏せ首を振る。

『なんでもない』
sha「・・そう、か」

初めて見る、寂しげな笑顔。俺は何も言えず黙ってしまう。






幼い口調に、美しい声に、下手くそな歌声に、深遠な瞳に、倒錯的な笑みに、


心が惹かれるのに、時間は必要なかった。






『ごめんなぁ、シャオロン。』





『楽しかったよ』

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まうるもち - 好きです....文章が神.....いつの間にか読み終えていた不思議 (2019年10月7日 23時) (レス) id: a48c43d4d7 (このIDを非表示/違反報告)
碧月(プロフ) - 紫龍さん» 誤字ですごめんなさい!ご指摘ありがとうございます! (2019年10月3日 6時) (レス) id: 8ab1994adc (このIDを非表示/違反報告)
紫龍 - 碧月さん» 失礼します…knさんの2条目『後者裏』って『校舎裏』の事ですか?誤字とかじゃなかったらすみません!! (2019年10月2日 23時) (レス) id: ed1de518a2 (このIDを非表示/違反報告)
碧月(プロフ) - アルムさん» ご指摘ありがとうございます! (2019年9月29日 9時) (レス) id: 8ab1994adc (このIDを非表示/違反報告)
アルム(プロフ) - コメント失礼します!碧月さんの作った小説はやっぱ神ですね!途中で気づきましたがemさんの小説の六限目の20行目の「…そらは愛おしさへと…」は「…それは愛おしさへと…」じゃないでしょうか?間違ってたらすみません!更新楽しみにしています。 (2019年9月29日 8時) (レス) id: 9866a4ca3f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:碧月 | 作成日時:2019年9月17日 6時

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