一条目 一方通行(kn) ページ26
愛とは。
私にとってそれは、重荷でしかない。
恋とは。
私にとってそれは、未知でしかない。
「好きです!つきあっ」
『嫌です』
今年何度目か数えるのも忘れた。放課後に校舎裏に呼び出すのやめてほしい。私は早く帰りたいんだ。
目をかっぴらき傷ついた顔を向けるのをやめてほしい。まるで私が悪者みたいじゃないか。
『じゃ』
「あ、っ、ま」
『さようなら』
踵を返し、私は自分のクラスへ戻る。
滑りのいいドアをゆっくりと開けると、夕暮れの光には溶け込めなさそうな金髪が一人。本を読んでいる。音に気づき顔を上げ、手を上げる。
kn「よ」
『ん』
私だとわかると本をしまい席を立つ。その隣においてある私の鞄を持ってきてくれる。
『ありがと』
kn「なんや、また振ってきたん?」
『そうだよ』
kn「冷たいなあ」
思ってもないことをよく言葉に出せるなこいつ。
『告られる身にもなってほしい本当に』
kn「お、モテ自慢か?」
『お前も似たようなもんだろ』
せやな!と否定しないのが腹立つので弁慶の泣き所を蹴ると彼はなにすんねん!と漫才並みのツッコミを入れる。
『さて、帰ろうか』
kn「おう」
帰路につく。
コンクリートの地面を踏み、夜が大きく口を開く。
『恋だの愛だの、なんなんだか』
kn「お前には分からんやろうな」
『なに、あんたには分かるの?』
kn「そらお前よりは」
初耳学。コネシマそういうの絶対興味ないと思ってた。
kn「なんやその顔失礼やな」
『失礼』
家族なんていらないとか言ってたのに、やはり人間って変わるもんなんだな。よく分からんけど。
kn「ま、キョウカは相変わらずこういうことに全く興味ないんやろ?」
『面白いくらいないね』
人の恋愛感情を否定するつもりはない。なので私抜きでどんどん人間を生産すればいい。
『むしろ不思議だ。家族でもない他人を何故好きになれるの?』
kn「家族も他人やんけ」
『お前の場合はな』
kn「お前の場合もな」
私は他人じゃないから、私は私だから、多分一生恋愛というものに縁のない人生を送るのだろう。孫を期待する親には申し訳ないが。
kn「ええやんけ、お前はそれで」
『!』
kn「お前らしくて」
恋愛に興味がない、そういって何度否定されてきただろう。だが、この男だけは、この幼馴染だけは、この言葉を受け入れ、笑ってくれる。
『・・変わってんなぁ、本当』
kn「変わってるお前に丁度ええやろ」
私には眩しすぎる、太陽の輝くのような笑顔。
恋愛に支配されてる世界で、私が私を失わないのは、君が照らしてくれているからなのかもしれないね。
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まうるもち - 好きです....文章が神.....いつの間にか読み終えていた不思議 (2019年10月7日 23時) (レス) id: a48c43d4d7 (このIDを非表示/違反報告)
碧月(プロフ) - 紫龍さん» 誤字ですごめんなさい!ご指摘ありがとうございます! (2019年10月3日 6時) (レス) id: 8ab1994adc (このIDを非表示/違反報告)
紫龍 - 碧月さん» 失礼します…knさんの2条目『後者裏』って『校舎裏』の事ですか?誤字とかじゃなかったらすみません!! (2019年10月2日 23時) (レス) id: ed1de518a2 (このIDを非表示/違反報告)
碧月(プロフ) - アルムさん» ご指摘ありがとうございます! (2019年9月29日 9時) (レス) id: 8ab1994adc (このIDを非表示/違反報告)
アルム(プロフ) - コメント失礼します!碧月さんの作った小説はやっぱ神ですね!途中で気づきましたがemさんの小説の六限目の20行目の「…そらは愛おしさへと…」は「…それは愛おしさへと…」じゃないでしょうか?間違ってたらすみません!更新楽しみにしています。 (2019年9月29日 8時) (レス) id: 9866a4ca3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:碧月 | 作成日時:2019年9月17日 6時