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伸びて来た手に反射的に避ける。
「いい加減執拗いで、アンタ」
「……なに?てか、前言うてた彼氏とちゃうやん」
「それが何やねん」
広い背中が見えて、見たくない顔は遮断された。
大ちゃんは聞いた事ないくらい低い声で、でも、落ち着く。背中のシャツは掴んだままこの時が過ぎるのを待つ。
「相変わらずやね、色んな人と関係持って」
「次もしもAちゃんの前に現れたら警察呼ぶで」
「は?ダル、」
「執拗い男は誰にも愛されへんよ、可哀想やな」
舌打ちを残して、帰って行った。
最後までも何がしたいのか分からへん、気持ちが悪いし、鬱陶しいし、何もかも嫌になる。また来たらどうしようとか不安になる。
振り返って「もう大丈夫やからな」と軽く肩を叩かれた。
「Aちゃんアイツが言うてた事忘れり、てか、もう存在すら忘れり」
『うん、大ちゃんが居てくれたから助かった』
「俺は何もしてへんよ。さ、はよ帰ってドーナツ食べようや」
トラウマとかやないけど、顔を見たら嫌な記憶がどんどん蘇ってきて気分悪くなる。好きでキラキラしてた毎日が、黒くなってそんな記憶が塗り替えられていく。
ふう、と深呼吸すれば心配そうに眉を下げてる大ちゃん
「大丈夫ちゃうよな、どっか寄る?」
『ううん、平気』
「俺しかおらんから素直に言うてええよ」
『…次また会ったらどうしよう』
「警察呼ぶ言うたから平気やろ。流石にアイツも警察言われたら引くと思うで」
『……大ちゃん、落ち着くからちょっと待って、』
ここまで執拗いとは思ってもなくて、
色々嫌な事言われてそれでも何とか耐えてたけど、今回のでなんか立ち直れないというか。怖くて仕方ない。
裏切られる事も、そんな事をして来た人に付き纏われるのも無理。立つのがやっと。
「ごめん、もっと早く気付けば良かったな」
申し訳なさそうに眉を下げるから、
その顔に自己嫌悪に陥る。
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☆(プロフ) - 毎日更新楽しみにしていました!読み終わっても何度も読み直すほど好きなお話です(´ω`)続編だして欲しいな〜と密かに思っております...♡ (2023年4月9日 3時) (レス) @page41 id: b2a7d98e1c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - とっても素敵な作品で一気読みしちゃいました(T-T)更新心待ちにしてます! (2023年4月6日 4時) (レス) @page39 id: 6089ae5abc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴぴ | 作成日時:2022年11月10日 21時