甘さ控えめに【橙】 (ページ24)

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松倉side

彼女の言ってることはよく分からなかった

距離を置く

別れ…ではないと思う

好きって確かに言ってくれた。
間違いじゃない。

「……えっ、それで受け入れたわけ？海斗は」

「だってそうするしかねえだろ」

初めてだった。

いつも出会う女性は色眼鏡で見てて、本当の俺を見ようとしなかった。

そんな中、Aちゃんだけは普通の俺を好きになってくれて嬉しいと思った。

「ちゃんと自分の気持ち伝えたの？」

「伝えたよ、伝えたけどさ、」

「もう1回伝えなよ、Aちゃんみたいな女の子手放したら勿体ないよ」

「あんなに可愛くて真っ直ぐな人中々いないと思うからさ、海斗なら大丈夫。好き同士なんだから」

元太にそう背中を押され、

好きな女の子をそう簡単に諦められる男じゃないから、撮影を終えたらすぐ飛び出してあの駅へと向かった。

もしかしたら今日仕事が休みでいないかもしれない。

仕事だとしても、何時に終わるか分からない。

連絡しても既読は付かないだろうし、電話も繋がらないだろうから、ただ駅へと向かう。

会えるなんて保証はない。

けど、どこか心の中で会えるだろうって少しばかりの期待があって、

Aちゃんに会いたい

ただそれだけの希望を抱いてた。

･
･

寒さの中、ただ人が過ぎ去っていく

日付が変わる寸前

あともう少しで終電も無くなる頃

ずっと探してた姿が見えた。

『……えっ、海斗くん、？』

たぶん、俺の見間違いかもしれない

寒すぎて幻覚が見えてるだけかも

良いように見えてるだけ

『どうしたの、なんでここに』

「ちょっと待って、さむ…っ、」

『ちょ…っ、ここ外だよ、』

温もりが欲しくて、

ただ抱きしめたかった。

Aちゃんに触れたくて仕方なかった

･