甘さ控えめに【橙】 (ページ3)

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敬語使ったら怒るからね！

なんて付け加えて海斗くんは言う。

『今日はお仕事だったの？』

「そうだよ、朝から今まで」

『そうなんだ、おつかれさま』

「Aちゃんも遅くまでおつかれさま」

電車の中で小さな声で話し合う

周りの人達に迷惑にならないように

電車が揺れる度肩がぶつかっちゃうのも、彼の膝の上にある手もなんだかドキドキする。

綺麗で、細長くて、でも爪は丸くて。

かっこいい。惚れちゃってる。

「Aちゃん？」

『あ、ごめん、聞いてなかった、』

「もー(笑)俺さ、今日たくさん褒められたんだ、凄く嬉しくて」

『良かったね。私は怒られてばかり』

「そうなの？」

今日も小さなことで怒られて、

あーあ、仕事辞めちゃいたいって思う。

頑張っても結局は空回りしちゃうというか、

余計なお世話、だなんて怒られちゃう。

「そんな事ないよ、大丈夫」

海斗くんの言う「大丈夫」は何でこうも安心できるんだろう。

Aちゃんなら大丈夫

海斗くんに会えたし明日も頑張れそう。

『へへ、ありがとう。元気出た』

「俺もね怒られたりするから、お互い様だね」

『…あ、もうすぐ着いちゃう』

十数分の時間

いつもなら長いってそう思うのに、海斗くんと話してるとすぐ過ぎてしまう。

あーあ、もっと一緒にいたい。

私が降りる駅のアナウンスが流れる。

あと少ししか居られないや、

この時間ももう終わっちゃう。

「あのさ…これ俺の連絡先。良かったら」

最後に渡された小さなメモ用紙

そこには電話番号とその横には「海斗」と可愛らしい字で書かれてた。

電車を降りると海斗くんはドア付近まで来て手を振ってくれる。過ぎ去るまで私も同じように手を振りつづけた。

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