揺れる一輪の花 (ページ5)

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#3 ページ5

目を瞑れば懐かしい風の匂いを感じる
去年と一昨年と描いてきた記憶を思い出すにはちょうど良い風だった。

「もう、また書いてるの？」

放課後、私は幼馴染である圭介の教室へと来ると圭介だけが残ってて何やら必死に手紙を書いていた

「おう来たか」

中学生のくせしてダブったバカな幼馴染
これには流石に私も呆れてしまった⋯。
万次郎は万次郎で学校には給食食べに行ってる様なものだし
春千夜に関してはよく分からないけど偶にボコした奴の写メを送ってくるから私ってホント不憫だな⋯って思う。

しかもダブった事で勉強を教える事が多いんだけど
万次郎が眼鏡かけた方が頭良さそうに見えると言う謎の事言うから鵜呑みにした圭介は伊達メガネを掛けて髪はベッタリのまさにガリ勉スタイルで学校に通っている

「⋯遅くなるなら私帰るよ？」

「あー待てやもう少しで終わらせっから」

門限は特に無いけど、暗くなる前に家に帰って
ある程度勉強しておかないと私も中々の点数だから人のこと言ってられなくなる

引き止められるから仕方ないと思い圭介の横の席に座り、漢字を教えつつ手紙を進める

「ん？⋯誰？」

「誰？」

「1組の松野千冬」

ズカズカと教室に入ってきた金髪の子が圭介の前の席に座ると何故かじっと手紙を見ていた

「何この字？」

そう言って金髪くんが指差す文字は、恐らく”虎”
だけど、圭介の汚い字で虎と言う字を読むのは難問だ

「トラ」

「違げーし」

「え！？嘘！？Aテメェも分かってなかったのかよ！」

「え、だって難しいじゃん」

「教えてもらってる意味ねぇだろ！！」

「うっさいわね黙って自分で辞書見ながら書きなさいよ！！」

「⋯チッ」

「⋯⋯」

私も虎と言う字は難しくて書けない⋯ので、圭介には教えれなかった
そんな二人のやり取りを見てる金髪くんが呆れた顔をしていた

「オマエ、ガリ勉でもねーのに⋯なんでそんな格好してんの？」

「⋯もうダブれねぇんだよオフクロが泣く」

「⋯これがトラな」

圭介が書いた虎の字の横に金髪くんが書いた恐らく合ってるであろう虎を書いてくれた

「おー！オマエいい奴だな！」

「おぉ！頭良いね！見た目はアレだけど！」

「はは⋯」

私達の勢いに苦笑いする金髪くん
人は見た目で判断しちゃいけないんだなと実感させられたな⋯。