揺れる一輪の花 (ページ3)

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#1 ページ3

「イヤ千冬ぅ、ちょっと⋯何してんのアンタ」

「え⋯」

「なんで花燃やしてんのよ」

「⋯あ、ヤベッ！スイマセン」

圭介のお墓参りに来た千冬と圭介のお母さんの涼子さんと私
だけど千冬はお墓参りというのに慣れてないのか、お供え用の花束にライターで火を付けるという奇行をすれば涼子さんに怒られていた

「いやヤベッじゃなくて」

「うわ〜⋯しまった〜⋯焦げちゃったっスね⋯」

「いや髪！髪っ！何ボーッとしてんだよっ！！」

「いでっ」

燃やした花の先端が千冬の髪に燃え移れば
涼子さんが頭を叩き広がりを抑えた

「んな焦げた花じゃケースケのテンション上がんねぇだろが！！ソッコー新しいの買ってこいよ」

「うっす」

「あと途中のコンビニでコーヒーも！」

「うっす」

「あのクリームもりもりのやつな！」

「あ、こっちにも火よろしく⋯はい、どーも」

咥えてた煙草にも火を付けさせ一服する涼子さん

「全く⋯あたしの周りの男共はどいつとこいつも⋯」

そう言って圭介のお墓を見て煙と溜息を吐いていた

二人のやり取りを千冬の隣で見てる私は未だに蹲み込んだまま

それにしても涼子さんは強い⋯私は未だに立ち直れず
いつも私の隣に居た圭介はもう居なくて、隣に圭介の幻影を求めてしまう

進まなきゃいけないのは分かってる
母親である涼子さんが進んでるのに私はなんて弱いんだろう

⋯いや、涼子さんは強いとか弱いとかじゃない受け入れなきゃいけないと覚悟を決めて進んでる

悔しくても嘆いても哀しんでも私達は前に進まないといけない
大事にしてきた思い出と共に生きていかないといけない

それが”今”を生きてる私達の精一杯の餞になるだろう。