#137 ページ42
夢主side
「A」
「何?」
万次郎がアポ無しで家に来るのはいつもの事なんだけど
何故か今日の彼は表情が暗い⋯何か、怖い
「何で今まで黙ってたんだよ」
「だから何⋯?」
主語がないのも良くある事
今まで黙ってた⋯何のことなのかさっぱり分からない
思い当たる節を探しても見つからない
何とか表情を和らげようと頬に手を添えれば、両肩を押され床に押し倒されてしまい思いの外勢いがあり後頭部を床に打ちつけ軽く跳ね返った頭を鈍い痛みで生理的に涙が流れた
「ぃ⋯たっ⋯何すんの!!」
「兄貴と一緒にイザナの事黙ってたのかよ」
「え⋯?」
痛みなんかどうでも良いぐらい穴が開くのではないかと思うほど目尻を吊り上げている万次郎に流石に萎縮してまう
別に黙っていた訳ではない⋯施設に遊びに行く事を秘密にはしていたけど真一郎君はいつの日か万次郎とイザナを会わせてやりたい、二人は俺の弟だ⋯と、そういう事を言っていたがイザナの事を黙ってた訳ではなかった
真一郎君が居なくなってから施設にも行かなくなりその後の彼がどうしてるかなんて時々しか思い浮かばなくなってたし
真一郎君が居なくなって互いを紹介するって言う機会も無くなった⋯。
だから、黙ってたわけではない話す機会が無くなった⋯ってだけ。
「今日、エマに真一郎とイザナの手紙を見せてもらった⋯そこにはお前の名前も書いてたし俺への憎悪を感じた
イザナは真一郎とお前にかなり執着してる」
「え、執着?何で?」
「⋯知らね」
そう言って私の上から退いた万次郎は私の手を取り起き上がらせた
「⋯万次郎ごめん、真一郎君も私も黙ってたわけじゃないそれだけは分かって」
私の意志が通じたのか先程の目は少しだけ柔らかくなれば悲しそうに寂しそうに私に抱き着いてくるので背中をポンポンと赤ちゃんをあやす様に優しく叩いてやる
「⋯⋯俺は何処に目指せば良いんだろうな」
「万次郎の側にはいつも仲間が居るよ私も居る⋯だから、一人で抱え込まないでお願い」
未来の万次郎の話を聞く限り、そうなってしまったキッカケを何処かで作ってしまったのではないか
万次郎が堕ちていくキッカケ、稀咲だけじゃない何か他の⋯
「いたっ!!」
首筋に鈍い痛みが走り反射的に万次郎の肩を押し顔を離れさせればしたり顔をしていて先程の闇に堕ちていく様な目ではなかった
「俺のって証拠になんだろ?」
何言ってんだか⋯なんて、考えながらも少し嬉しかったりするのは重症なのだろうか
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作者名:たまりんこ | 作成日時:2022年8月13日 12時