いつかのあの日にII (ページ33)

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#79 ページ33

「⋯⋯稀咲、私を殺す前にせめて最期に千冬に触れさせて⋯抵抗なんかしないする気なんかないから、お願い」

「最期の頼みなら聞いてやるよ、解いてやれ⋯下手な真似したら分かるよな？」

「Aちゃん⋯！」

眉間に皺を寄せ目で威圧を掛けてくる稀咲に首肯し
手足を解いてもらえば暴れた時に脱げたヒールも履かずに一目散に千冬の元へ行きドレスが血で濡れ染まっていこうが気にしない

千冬の開いてる目を閉じて頬を右手で包み親指で頬を撫でる
顔色が徐々に変わっていくがまだほんのりと温かい体温はまだ生きてるかの様に錯覚してしまう

後頭部に違和感を覚え稀咲が私の後ろへ来て銃口を突き付けられてるのが分かる

「千冬、私の方こそずっと傍に居てくれて支えてくれてありがとね⋯すぐそっちに行くから寂しくないよ⋯圭介とまた三人で遊ぼっか」

乾いた心と乾いた喉で絞り出した声は千冬に届いてるだろうか⋯。

千冬と私に来るの早すぎんだよって圭介怒るかな？
そこで真一郎君がまぁまぁって言って落ち着かせようとしてきたり⋯案外想像出来てしまうこの先に笑ってしまう
ほんと物語ってどう進むか分からないもんだね、万次郎⋯。
万次郎⋯随分と会えてないけど何処かで生きてると信じてるよ。いつかどこかで巡り会えたらその時は約束を果たそう。

「⋯タケミっち、私には誰かを救うのは向いてないのかもしれないだけど君なら大丈夫、万次郎と東卍⋯お願いね」

「Aちゃん！！！」

視界が涙で揺れる中、千冬の姿を目に焼き付けたくて振り返えずに伝えれば私の名前を呼び叫ぶタケミっちに自然と笑みが溢れた

大丈夫、君の心は誰にも負けてないよ⋯皆の”ヒーロー”