仮面を脱ぎ捨てて、くちづけを。【2434】 (ページ5)

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不器用…Ⅱ ページ5

半開きになったカーテンの隙間から、穏やかな午後の日差しがもれている。今昼寝をしたら気持ちいいだろう。少し緊迫した空気感でさえなければすぐにでも寝転びたかった。

ベッドに腰掛けた私の前を、服の裾をひらひらさせながら右へ左へうろうろとしているシェリン。
そのひらひらを目で追いかけていると、突然彼がしゃがみこんだ。

正面からかち合う視線。モノクル越しの瞳は、少し憂いを帯びているような気がする。色気さえ感じるそれを、私はじっと見つめた。

「…勘違いしないで欲しい、僕は別に機嫌を損ねたわけじゃないよ。」

ぼそりと放たれた言葉。

「あんなに驚くと思わなかったの、ごめんなさい。
今の貴方から感情を読み解くのは難しいわ…。教えて頂戴？」

私は思っていることを素直に口にしてみた。

以前から、時折彼はこのような表情を浮かべることがあった。私以外の人と話した後は、特に顕著に表れる。少し前に同じ質問をした時は愛想笑いではぐらかされてしまった。

もやもやとした気持ちを放っておけない。
シェリンの想いが聞きたかった。

「…Aは、僕が世間から抱かれている印象についてどう思う？」

「………え？」

逆に質問されて、少し動揺した。
シェリンらしくない発言だ。

「貴方はいつも皆に明るく振舞っていて、真面目だと評判だし…人柄の良い勤勉な探偵という印象が強いんじゃないかしら？」

「そう…だといいんだけれどもね。」

すっと立ち上がり、シェリンは私の隣に寄り添うように腰掛けた。
彼の艶のある髪が少し私の肩にかかる。ふわりとシャンプーの良い香りがした。

「自信がないの？貴方らしくないわ、シェリン。」

「…そういう訳じゃないさ。ただ僕は…」

言い淀む彼に続きを促すように、隣の綺麗な手に自分の手を重ねた。

少しの沈黙。

手は重ねたまま、体をこちらに向け直してシェリンは話し始めた。