コロイカ虐待

もう ページ8

「もうそろそろいいかな」
彼女がポツリと呟いた。
「アロハくんお疲れ様！私としてはこれくらいで満足だから、解放してあげるね」
…終わり？
終わりなの？解放してくれるの？マジで？
ズキズキと顔中に走る痛み。
今はただ、早くこの場から逃げ出したくて仕方なかった。
「じゃあロープを解くよ」
ロープの繋ぎ目あたりをゴソゴソといじられる。
本当に解いてくれるようだ…
…その時。
「…えっ」
バランスを崩した。
ロープは解けた。
しかし、解けたのはロープを巻きつけた部分であって、俺を巻くものは、何一つとして解けていなかった。
「じゃあね」
ロープの支えを頼りにしていた俺の身体は、そのまま倒れ、水の中に沈んだ。
「…っ」
必死に体を捩る。
彼女はそのままプールから出て行ってしまった。

……は？
誰が助けてくれんの？
待ってくれよ。
沈みゆく体は、プールの底につく。
俺のゲソだったものと、シャツが同じようにして沈んでいた。
それ以上は真っ暗で何も見えない。
傷に、顔に、水が入り込み、激痛が走る。
息がだんだんもたなくなる。
さらに心拍数も上がり、苦しくなってきた。
彼女はいない。
何か言ってるようだが、全く聞こえない。
少しずつ俺の世界が赤くなっていく。
待って、待って…俺、死にたくない。
理由も聞かされず訳も分からず痛ぶられて死ぬなんて…
嫌だ、嫌だ…！
もがく。
拳を作って力を込める。
ロープをちぎろうとする。
掻きむしる。
足を開く。
開くはずもない足を開く。
今度は曲げてみる。
俺の体が悲鳴を上げる。
それでも俺はやめない。
助けてくれる人なんかいない。
いない。
だから俺が。
苦しい。苦しい。
水圧に負けて俺の空気は上へと登っていく。
激しく鼻から水を吸う。
これ以上ない苦痛を味わう。
水は俺の口をもこじ開ける。
津波のように止まることなく入り込む水。
むせる。
足掻く。
吐き出せず入る。
気管支を蝕む。
俺は助けを求めた。
頭の中にあいつらの顔が映り出す。
今までの生き様。
そして昨日。
俺があいつらに酷い言葉を言ったこと。
あいつらの辛そうな顔。
全てが思い出される。
これが、走馬灯ってやつ…？
ハハ…
もう謝りにもいけねーや…
プールに差し込んだ一筋の光。
その光を追うように俺は…
俺…ほんっとダサくね？

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