コロイカ虐待

可哀想 ページ5

「あーあ、アロハくん可哀想」
は？どの口が言ってんだよ…？
「うわ、めっちゃ垂れてるじゃん。拭いてあげるね？」
サンバイザーをぐいっと上げ、俺の胸ぐらを掴んだかと思うと、俺が着ているびしょ濡れのおどるイカアロハで顔を拭き始めた。
「やめ、ろ…って」
うまく息ができない。
俺のシャツが染め上げられていく…
「はい、拭けました」
パッと手を離される。
頬の痛みが後からじわじわと来る。
あまりの痛さと情けなさに、歯を食いしばり、彼女を睨みつけた。
「そんな顔で見ないでくれる？アロハくんが悪いんだよ」
俺が、悪いってさぁ…
「…俺さぁ、そんなに恨まれることした覚えないわけ。ね？散々やってくれたし、少しだけでも教えてくれない？」
苛立ちが止まらない。
なぁ、これは行き過ぎたやっかみか…？
本当に覚えがねぇんだよ…
「世の中には知らなくて良いことってあるでしょ」
「俺の、ことなのに…？」
腫れ上がった頬がヒクつく。
こいつの態度がおかしいことは気づいていたが…
おい、これはねーだろ…
「はい、休憩終わりー」
「は？休憩…」
俺が言葉を言い終わる前に、彼女は俺の顔を掴んだ。
背筋が、凍る…
ちゃんと、呼吸ができない…
「そんな怯えないでよ。私も沈めるのはちょっと飽きてきたし、手も見てよ。ヒリヒリしてる」
手がヒリヒリって…
俺のことを散々殴ったからだろ…？
マジでこいつは何がしたいんだ？
こっちの情緒までおかしくなる…
「ま！左手はまだまだイケるんだけどね」
「は、嘘だろ…？」
異様な程強い力で右手で顔を押さえられる。
「安心して、もう沈めないから」
違う、違う違う違う…やめろ！やめてくれ…！
「利き手じゃないし、力加減が分からないや」
「あ…」
ブンっと振り下ろされる拳。
右目の瞼辺りに直撃する。
再度こちらに向かってくる拳。
拭いたばかりの鼻をへし折る。
おぼつかない早さで来る拳。
水で冷えていた頬を再加熱する。
「…ぅ…ぐぅ…う」
激しい痛みに支配される。
満身創痍、だっての…
水責めの後は直接的な暴力かよ…
「えへへ、痛いでしょ？水だといつ死んじゃうか分からないからね」
何で、笑ってんだよぉ…
俺が、なんか悪いこと…したから？
俺が、最近調子に乗ってた…から？
「ひ、は…っぅう…」
鼻から溢れ出る液は、俺のシャツを濡らし、水へと溶けていった。

あいつら→←痛え

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す