なあ ページ35
早朝。
街の洒落たカフェの前で、小さな人集りができていた。
彼らの目的は開店前に並ぶことではない。
その中心には、オレンジチームのリーダー…かくして隊長である、S4のアーミーが仰向けに倒れていた。
変わり果てた姿。
その場にいる誰もがごくりと唾を飲み込む、衣服も威厳も乱れた様。
皆が知る彼の象徴と言えるものは、僅かに残るフェイスペイントと、紐の解けたロッキンチェリーだけであった。
普段真一文字に固く結ばれていたアーミーの唇は、項垂れるようにして開かれ、不規則な呼吸に合わせて震えていた。
呼吸に混じって発せられる彼の声は、周りの悲鳴とどよめきに掻き消される。
その言葉が届いていたのは、彼を介抱する数名のボーイだけだった。
「ライダー…貴様も…そんな顔をするのだな……」
揺れ動く瞳に輝きはない。
「クソッ…死ぬな、死ぬなよ…アーミー…あと少しの辛抱だからよぉ…ッ!」
丸めたジャケットを後頭部と地面の間に挟み、安静な体勢にさせる。
「……酷い…腕が捻れて変色してる。誰か…布と固定するものを!」
周りへの協力を仰ぐナイトビジョン。
彼自身に干渉する者は俺ら2人に留まらない。
直視するのも辛いほどに腫れ上がった顔を見つめながら、アーミーの手をそっと握った。
ほんの少し、彼の表情が柔らかくなる。
そして、ゆっくりと唇が動いた。
「……なあ……」
「なんだよ?」
「…エフテンは……無事か?」
口を開けば、他人の心配ばかり…
なんだこいつ、なんでこんな優しい顔してんだよ…
俺の知ってる、こいつは…もっと…
唇を噛み、歯を食いしばる。
慣れた手つきでナイトビジョンがバンダナを巻き、即席の固定具で処置を施す。
きゅっと結ぶ度に彼の眉間に皺がよった。
「無事だぞ…お前が、ここまで運んでくれたからな」
強く心が締め付けられるような衝動を抑え、やっとの思いで答えた。
「…そうか……良かった……」
「あ…アーミー……ッ!ダメだ、お前はまだ…!!」
満足そうに息をつき、目を細めるアーミー。
力の抜けた腕が、手からずるりと落ちる。
役割を果たした安堵と共に、彼の意識は薄れていった。
第二の事件。
アーミーとエフテンの発見及び証言により、事態が発覚した。
世間の反応は様々だった。
犯人はまだ捕まらないのか、アロハの二の舞になってしまったか…など。
多くの憶測が飛び交った。
うち、最も注目を浴びたのが、
狙いはS4ではないか、というものだった。
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しゃぼん🫧 コロイカダイスキ - ニヤニヤ…。 (3月5日 18時) (レス) @page33 id: 4cc781ec23 (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - mariaさん» ふふ…毎度何かと世話焼きな彼、素敵ですよね!亀ペースですが、彼らの行く末を気長にお待ちくだされば幸いです。 (8月5日 23時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
maria - マスクくんの反応が気になるのでマスクくんお願いします! (8月4日 18時) (レス) @page35 id: 4c43ea808a (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - アーミー好きさん» こちらこそキャラの魅力を感じてもらえて嬉しい限りです!今後もぼちぼち頑張りますので、是非ともよろしくお願いします! (6月27日 19時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
アーミー好き - これとても好きです‼︎自分の好きなキャラだし自分の好きな展開というか...とにかく好きですありがとうございます‼︎ (6月27日 17時) (レス) @page35 id: 3264f1cacf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あすあま | 作成日時:2023年4月28日 4時