勝利 ページ34
…なん、だと…
「君が思ってるよりかは楽なはずだよ」
乱暴に背中を押され、右腕を引っ張られ、無理矢理立たされる。
「…い……っ…」
身体が、あちこちが、全てが痛む。
なんとか右腕を壁につきながらそれを保った。
「ただ、早めに治療した方が良いかもね」
ガクガクと足の震えが止まらない。
ああ、奴の言っていることは…
「ゲソ、薬漬けにしたやつだったし」
──毒だ。
「…うっ…ぇえ…」
身体中を駆け巡る吐き気、悪寒。
「…はぁ…はぁぁ…ッ」
あ…
胸、も…苦しくなってきて…
「ふーん、今頃効いてくるんだ」
貴様は…
どれだけ吾輩を…いたぶれば気が済むのだ…?
「…っ…ぐ…がッ…」
吾輩を決して殺しはしない、生き地獄。
ぴくりと瞼の筋肉が痙攣する。
「もう一つだけいいこと教えてあげる」
彼女は高らかに指差した。
「あそこの水ね、それこそ無味無臭ではあるけど、適当な薬入れちゃったから」
エフテンが…何度も落ちた水槽を。
「…早くした方がいいと思うよ?」
「帰れるものなら、ね」
…苦しみが、なんだ。
…痛みが、なんだ。
それよりも、優先すべきことはあるだろう。
「じゃ、アーミーくん、お疲れ様!」
彼女の妙に明るい声を最後に、記憶は途切れた。
暗い、暗い…誰の手も行き届いていないであろう、荒れた道を進む。
無機物のように背にのしかかるエフテンの身体は、歩みに合わせ、ただ揺れていた。
…あと少しでいい、吾輩に体力が残っていれば…
何度、倒れ込みそうになり、
何度、咳き込みそうになり、
何度、この身が限界を迎えるかと思ったか。
彼女を助けなければ。
…ただこの一心で、諦めるなと耐え続けた。
びっしり滲みゆく脂汗。
…吾輩が目指すべき場所は、一つ。
見えるではないか…街の灯りが。
手を伸ばせば届きそうなほど…近くに。
大丈夫だ…
きっと、大丈夫……
終わったのだから。
乗り越えたのだから。
この先、どんなことが待っているかは分からない。
動画を…撮られていたかもしれない。
恥だと罵られるかもしれない。
だが、乗り越えた。
「ふ…はは…」
奴の前で溢れた絶望の笑いではない。
街灯の差し込む道を見て確信した…
吾輩の…
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しゃぼん🫧 コロイカダイスキ - ニヤニヤ…。 (3月5日 18時) (レス) @page33 id: 4cc781ec23 (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - mariaさん» ふふ…毎度何かと世話焼きな彼、素敵ですよね!亀ペースですが、彼らの行く末を気長にお待ちくだされば幸いです。 (8月5日 23時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
maria - マスクくんの反応が気になるのでマスクくんお願いします! (8月4日 18時) (レス) @page35 id: 4c43ea808a (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - アーミー好きさん» こちらこそキャラの魅力を感じてもらえて嬉しい限りです!今後もぼちぼち頑張りますので、是非ともよろしくお願いします! (6月27日 19時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
アーミー好き - これとても好きです‼︎自分の好きなキャラだし自分の好きな展開というか...とにかく好きですありがとうございます‼︎ (6月27日 17時) (レス) @page35 id: 3264f1cacf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あすあま | 作成日時:2023年4月28日 4時